研究課題/領域番号 |
23617041
|
研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
本田 修二 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (40100127)
|
研究分担者 |
本田 陽子 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (90399460)
|
キーワード | マウス / 老化 / トレハロース |
研究概要 |
トレハロースを飲料水を通してマウスに与えて長期間飼育し、加齢指標と寿命を測定した。マウスは当研究所で供給され、飼育条件等が確立されているC57BL/6Jおよび老化促進マウスSAMP10、SAMR1の♂を使用した。トレハロースはC57BL/6Jでは10ヶ月齢から、SAMP10、SAMR1は37日齢より2%で与えた。長期間の飼育を行い、生存、体重、飲料量、餌摂取量を記録した。体重、飲料量、餌摂取量はC57BL/6J、SAMP10、SAMR1でトレハロースの影響は見られなかった。C57BL/6Jでは中央値、25パーセンタイルにおいてトレハロースによる有意な寿命延長が見られ、トレハロースが中年期での生存率を上昇させる効果を持つことを示した。尿検査を経時的に行ったところ、尿中アルブミンおよび尿中タンパク質の加齢に伴う上昇が見られたが、トレハロースにより抑制された。約30ヶ月齢において一部サクリファイスし、脳、心臓、肝臓、腎臓、膵臓の各組織切片を作製し観察し、若齢マウスと比較した。腎臓における糸球体硬化や糸球体面積の増大が見られ、トレハロースにより抑制された。これらの結果からトレハロースは腎臓における老化を抑制することが示された。SAMP10、SAMR1における脳組織の加齢変化を観察した。神経細胞におけるユビキチン化封入体の蓄積が加齢SAMP10において顕著であるという報告があるが、確認できた。トレハロースにより抑制された。この結果はトレハロースがSAMP10における脳の老化を抑制することを示す。現在、記憶、学習能力の加齢に伴う変化におよぼすトレハロースの影響を明らかにする実験を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トレハロースのC57BL/6Jマウスの寿命への影響がおおむね明らかになっている。特に中年期での生存率低下をトレハロースが顕著に抑えることが示された。 トレハロースの老化への影響が、腎臓においては糸球体の硬化と容量の増加の抑制、および脳においては神経細胞におけるユビキチン化封入体の蓄積の抑制が明らかになった。
|
今後の研究の推進方策 |
トレハロースの記憶、学習能力の加齢変化におよぼす影響の研究を老化促進マウスSAMP10において進める。トレハロースの寿命延長と老化遅延効果の機構を明らかにするために、トレハロースの各臓器における遺伝子発現の加齢変化におよぼす影響を調べる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
トレハロースの記憶、学習能力の加齢変化におよぼす影響の研究において各月齢のマウスを揃えて実施する準備が整わなかったため、次年度に行うための必要経費が生じた。 各月齢の老化促進マウスを準備する。記憶、学習能力の測定を各月齢のマウスで実施する。
|