研究課題/領域番号 |
23618001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大西 俊介 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10443475)
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キーワード | なし |
研究概要 |
8週齢の雄性ACIラットに対して10Gyの放射線照射を行い,同日に50万個のLewisラット卵膜由来間葉系幹細胞を静注した.細胞投与5日後にサクリファイスし,細胞投与の効果を評価したところ,小腸+大腸の長さの短縮が有意に改善されていたものの,病理スコアや小腸におけるTNFaなどの炎症性サイトカインの発現については改善傾向を認めなかった. 上記のモデルが大量の放射線被曝による重症急性腸炎に類似しており,実際の臨床の場では数回の放射線照射後に腸炎が発症することから,小線量照射を数回行う動物モデルを作成して実験を行った,8週齢の雄性SDラットに対して,肛門周辺以外を鉛で遮蔽し,3Gy/日×5日間の放射線を行って放射線腸炎モデルを作成し,5日目に50万個のヒト卵膜由来間葉系幹細胞を投与して3日後の効果を評価した.炎症性サイトカインの発現は,IL-1bやCXCL2などいくつかの項目で間葉系幹細胞の投与により改善傾向を示したが,細胞非投与群との有意な差は認めなかった.病理学的には,HE染色による病理スコアは改善傾向を示さなかった.単球/マクロファージのマーカーであるCD68陽性細胞の浸潤が,間葉系幹細胞の投与によって抑制されている傾向を示したが,有意な差を認めなかった.一方,好中球マーカーであるmyeloperoxidase(MPO)染色や,Tリンパ球のマーカーであるCD3染色においては,間葉系幹細胞投与による改善は認めなかった.放射線照射による体重減少は細胞投与による改善を示さなかった. ヒト大腸癌細胞株CaCO-2細胞に対して放射線照射を行ったが,4Gy照射でも細胞死が誘導されなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
vitroの実験に遅れを生じているものの,vivoの実験においては安定的に腸炎モデルを作成できるようになった.また,放射線照射スケジュールを変更することでより臨床に近い放射線腸炎を作成できるようになった.
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今後の研究の推進方策 |
放射線腸炎モデルについては,今後サクリファイスして評価する日を送らせて,細胞投与後7-10日後に評価することにする.また,ヒト卵膜由来間葉系幹細胞の投与数も変更して行う.また,CaCO2細胞で放射線照射により細胞死が誘導されなかったため,ラットIEC-6腸上皮を用いて放射線照射を行い,間葉系幹細胞による保護効果を検討していく.
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次年度の研究費の使用計画 |
動物モデルに用いるラット,および定量的PCR,免疫染色,細胞培養にも用いる血清などに使用する.
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