研究課題/領域番号 |
23618002
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
竹原 有史 旭川医科大学, 医学部, 特任講師 (90374793)
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研究分担者 |
川辺 淳一 旭川医科大学, 医学部, 特任准教授 (10400087)
長谷部 直幸 旭川医科大学, 医学部, 教授 (30192272)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 再生医学 |
研究概要 |
平成23年度計画に基づき以下の研究を行った。(1)マウス心臓由来Sca1陽性心筋幹細胞(Sca1-CSC)の樹立及び検討C57BL/6マウス(雄 8-12週齢)心臓を酵素処理し、得られた単一細胞群をbFGF 40ng/ml存在下のもと増殖培養し、Stem cell antigen-1(Sca1)抗原陽性細胞をMACS sortingにて純化し、Sca1-CSCをクローン化した。虚血心由来Sca1-CSCを樹立するために、マウス冠動脈虚血再還流モデルを確立した。イソフルエンによる全身麻酔下で開胸、冠動脈前下行枝を30分bandingした後再還流させた。虚血心由来Sca1-CSCは術後1週間でエコーにて貫壁性梗塞が確認されたマウス心臓より樹立した。現在、正常心由来Sca1-CSC(N-CSC) 及び虚血心(ischemia)由来Sca1-CSC(I-CSC)を、同一条件で培養したのち、増殖能(WST、BrDU)、心筋分化能(特異的心筋分化誘導)の評価を実施している段階である。(2)マウス由来CSCへのApe1遺伝子導入我々のクローニングしたApe1/Ref1遺伝子の全長cDNAを挿入し、IRESにより蛍光タンパクDsRedを共発現するレトロベクターpRetro-Ape1-IRES-DsRedを用いて、上述のN-CSC及びI-CSCにApe1遺伝子を導入した。次にFACSareaを用いてApe1遺伝子導入細胞のみをsortingし、Ape1遺伝子のTg系をクローン化した。現在、クローン化したN-CSC及びI-CSCについて、上述(1)をcontrolとしてApe1遺伝子の機能解析を実施している段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、重症心不全患者に対する自家心筋幹細胞(CSC)移植を用いた心筋再生医療を最適化することを目標とする。そのため、問題点である虚血状態にある移植組織内での移植細胞死を克服するために、CSCの虚血ストレスへの耐性獲得及び虚血心筋由来の機能低下したヒトCSCを再生し移植細胞として機能を最大限発揮させることが必要である。本研究では塩基除去修復機構の主要酵素で、強力な抗酸化、並びにDNA修復作用を有するApe1に着目し、(1)CSCにおけるApe1を介した抗酸化・DNA修復機序の解明、(2)Ape1遺伝子導入による自己CSCの虚血耐性・DNA修復機能を介した移植細胞機能の再生・高機能化、を目的として研究を計画した。この目的を達成するため、平成23年度はマウス正常心由来Sca1-CSCの樹立に成功した。さらに本研究の目的であるApe1遺伝子機能解析のため、レトロウィルスを用いたApe1過剰発現系の構築を行った。また虚血心由来Sca1-CSCの樹立に対しては、マウス心筋虚血再還流モデルの構築を行い、安定した心筋梗塞マウスの作成に成功した。この心筋梗塞マウス心臓よりSca1-CSCの単離、培養に成功した。現在、この実験系を基盤として、虚血心におけるCSC機能の変容並びにApe1遺伝子の関与、Ape1遺伝子導入による幹細胞機能の改善効果を検証しており、平成23年度計画に基づき概ね順調に経過していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度にはApe1遺伝子導入による自己CSCの虚血耐性・DNA修復機能を介した移植細胞機能の再生・高機能化を目標とする。この目標を達成するために、虚血心におけるCSC機能の変容並びにApe1遺伝子の関与、Ape1遺伝子導入による幹細胞機能の改善効果を検証する予定である。想定される課題としてApe1過剰発現系における Ape1遺伝子導入による最適な発現増幅量及びその均一化は実験結果の解釈に大きな影響を与える。遺伝子導入効率を含め、至適発現量の設定及びクローンの作成により解決を図る。上記に想定される課題に適切に対処しつつ、 Ape1遺伝子導入による虚血心由来CSCの機能再生が確認された場合、Ape1遺伝子導入されたマウスN-CSC、I-CSCを虚血再還流法により作成したヌードマウスの虚血心(急性期:再還流後20分)に移植、心筋再生、心機能改善効果を評価する。細胞生着はウイルスベクターにより共導入されたDsRed発現によって、定量的に評価可能である。マウスCSCにおいて、移植効果の改善が確認された後、ヒト虚血心由来CSCにおいても同様の検討を行う。評 価(1)(in vivo) :心機能評価:心エコー図 左室駆出率(LVEF)、左室拡張末期径(LVDd)。評 価(2)(in vitro) :移植細胞生着、ホスト心筋内心筋分化並びに血管新生、サイトカイン動員.以上の実験系により、本検討における仮説の証明がなされれば、最終目標である機能低下した虚血性心疾患患者由来ヒト自家CSCのApe1遺伝子導入による細胞機能再生を介した、細胞移植効果の改善が達成されると考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では、心筋幹細胞のApe1遺伝子導入を介した高機能化、移植効果の改善をin vivo、in vitroの両側面から検討するため、ウイルスベクターの作成、特異的抗体を用いた細胞ソーティング、細胞機能の定量化、移植動物、虚血モデル作成など多岐にわたる実験設備を必要とする。(1)心機能解析は心筋再生治療の移植効果を世界に発信するためには、超音波装置による解析のみではなく、心臓カテーテルを用いた心血行動態評価が不可欠とされている。従って、小動物用心機能解析システムの配備を設備備品費に計上した。(2)レトロウイルスベクターによる過剰発現系を使用することから、ウイルス作成のためのGP2293細胞、コンピテントセル、ウイルス導入試薬(FUGENE6)、導入効率を改善し細胞毒性を軽減させるレトロネクチン細胞皿、Max-Prep等多くの消耗品が必要であり、計上している。(3)実験動物はCSCの採取には虚血モデル由来も含め、多くのマウスを必要とする。また異種移植を前提にすることから、ヌードマウスの使用がも必須であり、100頭前後の実験動物購入が必要と算定した。(4)in vitroの細胞機能の評価、機序解明に際しては細胞表面抗原解析に用いるフローサイトメトリー抗体、PCR試薬、培地、増殖因子などの必要消耗物品の必要数を算定した。MACSによるcell sortingに関しては、Sca-1-MACS抗体を使用することが細胞単離の第一段階であるため、多くの抗体数が必要となる。またMACS AREAを使用するための試薬関連の消耗品も必須である。(5)旅費は本研究に関連する心筋再生の最新動向を常に把握し、本研究にそれらを還元するとともに、本研究で得られた成果を国内、海外にいち早く発信する目的で国内、海外への研究会もしくは学会への参加を目的とした旅費を計上した。
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