研究課題/領域番号 |
23618005
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
長尾 慶和 宇都宮大学, 農学部, 教授 (70291953)
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キーワード | 再生医学・医療 / 幹細胞 / 分化誘導 / ヒツジ |
研究概要 |
検討課題1.移植細胞の分化状態と移植されるヒツジ胎子の胎齢と移植部位の検討 23年度における「小課題1.移植細胞の分化状態と移植された後の生着・分化との関連」および「小課題2.ヒツジ胎子の胎齢と移植部位と生着・分化との関連」の検討により、初期分化誘導したサルES細胞を妊娠60日前後のヒツジ胎子へ移植することにより、高い生着率と目的とする造血系分化誘導が達成できた。24・25年度は、この「妊娠60日前後のヒツジ胎子」の肝臓に着目し、この時期の胎子肝に特異的に発現し、初期分化細胞の造血系分化をサポートしている因子の解析に着手した。胎齢60日前後の胎子肝で「Stem Cell Factor」が強く発現していることから、この因子が幹細胞の造血系分化に強く関している可能性があり、検討を進めている。 検討課題2.ヒツジ胎子および移植細胞の調整による生着・分化効率の向上 23年度には、「小課題1.ヒツジ胎子に対するブスルファン投与」について、母親経由でブスルファンを投与することにより、ヒツジ胎子の骨髄細胞増殖活性を抑制できることを明らかにし、その至適投与量を決定した。24年度には、ブスルファンでレシピエントのヒツジ胎子の骨髄活性を抑制した後に細胞移植を行い、キメラ率を向上させることができるか否か、その至適タイミングと合わせて検討した。その結果、ブスルファン投与から2日目の細胞移植では効果が見られなかったのに対して、6日目の細胞移植においてはキメラ率が有意に向上した。これにより、ヒツジ胎子へ細胞移植する際のブスルファン前投与の有効性のその至適条件が明らかとなった。平成25年度には、これらを組み合わせてヒトiPS細胞を移植したヒツジ産子を得た。また、「小課題2.ヒト間葉系幹細胞との共移植」ならびに「小課題3.移植細胞に対するHoxB4遺伝子の導入」の実施に向けた準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前述の通り、平成23および24年度の検討により、「検討課題1.移植細胞の分化状態と移植されるヒツジ胎子の胎齢と移植部位の検討」における「小課題1」および「小課題2」、ならびに「検討課題2.ヒツジ胎子および移植細胞の調整による生着・分化効率の向上」における「小課題1」の検討により、ヒツジ胎子へサルES細胞を移植する際の移植細胞と移植されるレシピエントの至適条件が明らかとなった。また、レシピエント胎子へのブスルファン投与による胎子のコンディショニングも可能となった。これらの成果を踏まえて、平成25年度にはヒトiPS細胞をヒツジ胎子へ移植し、産子を得ることに成功した。以上より、本試験は計画以上に順調に経過していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度には、「検討課題1.移植細胞の分化状態と移植されるヒツジ胎子の胎齢と移植部位の検討」について、ヒツジ胎子の胎齢毎の微少環境の解析を行い、サル初期分化ES細胞の造血系分化をサポートしている因子を明らかにしたいと考えている。 また、「検討課題2.ヒツジ胎子および移植細胞の調整による生着・分化効率の向上」については、ヒトiPS細胞移植試験により産まれたヒツジ産子の解析を進めると同時に、共移植の実施に向けて準備を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度前半までの研究成果を踏まえて、平成25年度後半には、初期分化誘導を行ったヒトiPS細胞をヒツジ胎子へ移植し、ヒツジ胎子内で造血系へ分化誘導する実験を行った。現在、順調に産子が産まれてきており、徐々にヒツジ産子の解析を始めたところである。解析は平成26年度いっぱい継続する予定である。 平成26年度に繰り越した経費は、ヒツジ産子の解析のための消耗品経費ならびに母ヒツジおよび産子の飼養管理経費に使用される予定である。
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