検討課題1.移植細胞の分化状態と移植されるヒツジ胎子の胎齢と移植部位の検討 23年度における「小課題1」および「小課題2」の検討により、初期分化誘導したサルES細胞を妊娠60日前後のヒツジ胎子へ移植することにより、高い生着率と目的とする造血系分化誘導が達成できた。24-26年度は、この「妊娠60日前後のヒツジ胎子」の肝臓に着目し、胎齢60日前後の胎子肝で「Stem Cell Factor(SCF)」が強く発現していることから、この因子が幹細胞の造血系分化に強く関している可能性があり、検討を進めた。その結果、SCFはこの時期の胎子肝で必ずしも特異的ではなく、造血系分化を主体的にサポートしているのではない可能性が高まった。結果的に、SCF以外に様々な因子が関与している可能性が高まったが、特定には至らず、今後の可検討課題として残った。 検討課題2.ヒツジ胎子および移植細胞の調整による生着・分化効率の向上 23年度には、「小課題1」について、母親経由でブスルファンを投与することにより、ヒツジ胎子の骨髄細胞増殖活性を抑制できることを明らかにした。24年度には、ブスルファンでレシピエントのヒツジ胎子の骨髄活性を抑制した後に細胞移植を行い、ブスルファン投与から6日目の細胞移植においてはキメラ率が有意に向上した。これにより、ヒツジ胎子へ細胞移植する際のブスルファン前投与の有効性のその至適条件が明らかとなった。25-26年度にかけて、上記の技術を組み合わせてヒトiPS細胞の移植を行い、得られた産子の造血系にiPS細胞由来のヒト造血系が構築されていることを確認した。「小課題2」ならびに「小課題3」については、現在移植実施に向けて妊娠ヒツジを調整中である。移植と得られた産子の形跡については、今後の課題として残った。
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