研究課題/領域番号 |
23618006
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
杉谷 加代 金沢大学, 保健学系, 助教 (20162258)
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研究分担者 |
郡山 恵樹 金沢大学, 医学系, 助教 (70397199)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | Factor XIII-A / optic nerve / retina / transglutaminase / CNS regeneration / neurite outgrowth / axonal elongation / zebrafish |
研究概要 |
魚類の中枢神経は、神経損傷後に完全なる軸索再生・修復が可能である。本研究では特にタンパク架橋酵素としての作用を有するTransglutaminase(TG)ファミリーに着目し、魚類視神経修復過程でのその動態について検索を行った。TGファミリー各タイプに特異的なFITC標識合成ペプチド基質を視神経損傷部位に反応させたところ、FactorXIIIの活性が他のTG1やTG2に先駆けて損傷後早期に発現上昇していることが判明した。視神経での、FactorXIII 酵素活性レベルの上昇が遺伝子学な発現上昇にも裏打ちされるものであるかどうかを確認するため、視神経よりtotal RNAを抽出しこれによりcDNAを合成、シーケンス解析を行った。この際、ゼブラフィッシュは非常にサンプル採取量が少ないため、金魚を用いて視神経サンプルを調整し遺伝子解析を行った。この結果、金魚視神経に損傷後発現したFactorXIIIは744のアミノ酸からなるタンパクであり、FactorXIIIの酵素活性ユニットであるAサブユニット(Factor XIII-A)であることが推定された。mRNAレベルでのFactorXIII-Aの変動を視神経および網膜でのRT-PCR、in situ hybridizationで検索したところ、視神経損傷部位では1時間後から、網膜では損傷後3-7日をピークに発現が上昇することが確認された。タンパクレベルでのFactorXIII-Aの発現を検索した結果、FactorXIII-A は84kDaのタンパクであり、発現の局在は網膜神経節細胞であることがわかった。またmRNAレベルでの変動と同様、損傷後3-10日をピークに発現が上昇することが判明した。以上の結果より、魚類視神経損傷後のFactorXIII-Aの発現上昇が、視神経軸索再生過程において重要な役割を果たしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度に目標にしていた内容はほぼクリアできた。ただ、サンプルとしてゼブラフィッシュを用いる予定であったが、1尾あたりの視神経サンプルが非常に少なく、RNA抽出段階で困難を極めたため、シーケンス解析等を金魚に切り替えて実施した。結果的に金魚とゼブラフィッシュのFactorXIIIAのホモロジーを検索した結果、85%の一致率を示した。視神経損傷後のFactorXIIIAの変動についても、金魚とゼブラフィッシュでは、発現部位等ほぼ同等の結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、視神経再生過程におけるFactorXIII生理学的機能の解析に重点をおくこととする。そのため、RGC-5 cell (ラット網膜神経節細胞Cell Line)や網膜組織片などを用いた強制発現実験を実施する。また、FactorXIIIのsiRNAなどを用いた発現抑制により、どのような影響が出るのかを検索する。また、ゼブラフィッシュ遺伝子データーベースの解析より、5’上流のFactor XIII-Aプロモーター領域の解析を行う。これにより、視神経損傷後の発現誘導が何によって起こるかについて推定し、得られた候補分子について、in vitroの実験により確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、FactorXIII-A強制発現や遺伝子ノックダウンに必要な、試薬類の購入、および培養細胞を使った実験に必要な、培地、血清、プラスティックなどの消耗品を購入する。また、in vivo での効果を確認するための実験動物(ゼブラフィッシュ、マウス)の購入及びエレクトロポレーション用試薬の購入を予定している。これまで、既存の超低温フリーザーを使用し、動物より摘出したサンプル保管やmRNA の保存に用いていたが、故障のため使用できなくなった。そこで、初年度研究費の一部(194,701円)を確保し、今年度研究費の一部と合わせて、超低温フリーザーの購入を計画している。
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