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2012 年度 実施状況報告書

低分子化合物による幹細胞遊走の制御と再生医学への応用

研究課題

研究課題/領域番号 23618007
研究機関大阪大学

研究代表者

前田 明人  大阪大学, 産学連携本部, 特任教授 (50298882)

キーワード再生医学 / シグナル伝達 / 細胞・組織
研究概要

本研究では、間葉系幹細胞の細胞遊走を亢進させる化合物を見つけるために、天然物ライブラリーからボイデンチャンバー法を用いた探索を行い、間葉系幹細胞の遊走を活性化する低分子化合物を複数同定した。 前年度の研究によって、そのうちPL-70、PL-17とPL-C1は、比較的高い間葉系幹細胞の遊走活性を有し、細胞特異に強い感受性も認められた。そこで 3つの化合物について細胞内シグナル伝達系との関連性の解析を進めた。また、次年度の準備のため動物実験のためのモデル確立も併せて行った。 PL-70刺激による細胞遊走に関連するシグナル伝達系について、ウエスタンブロッティング法を用いて細胞内機能分子の活性化状況を調べたが、特定のプロテインキナーゼの影響を受けていなかった。 さらに化合物刺激した細胞染色像で細胞骨格の状況を調べたところ、細胞内アクチン骨格の発達に違いがあった。また、アクチン重合試験において、抑制効果が認められた。これらから、PL-70は細胞内アクチンに直接作用する可能性が示めされた。 次にPL-17とPL-C1刺激による細胞遊走に関連するシグナル伝達系について、細胞内機能分子の活性化状況を調べたところ、細胞内でチロシンリン酸化が起きていた。 キナーゼ阻害剤によって細胞遊走も抑制されるので、PL-17とPL-C1は特定のチロシンプロテインキナーゼの活性化を起こすことで細胞遊走を活性化する可能性が考えられた。さらに化合物を付加したビーズと相互作用するタンパクの分離分析を行い幾つかの分子に絞り込んだ。 以上の結果より、PL-70、PL-17と PL-C1について細胞遊走に関与している細胞内機能タンパクと相互作用している可能性が示唆された。 また、動物実験のためのモデル作製については、骨髄移植モデル、細胞遊走モデル、創傷治癒モデルを確立することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

間葉系幹細胞の細胞遊走を亢進させる物質を見つけるために、天然物ライブラリーから探索を行い、間葉系幹細胞の遊走を活性化する低分子化合物を同定している。 そこで本研究では、同定した化合物の刺激による細胞遊走の特性とシグナル伝達を解析することでメカニズムを解明し、さらに、動物組織内での化合物刺激による幹細胞の遊走活性と組織再生の効果を調べることで再生医学へ応用するための基礎確立を目的とした。平成24年度では、前年度に得られた化合物の細胞応答特性と細胞内シグナル伝達系を関係付けるため、細胞内機能分子の活性化状況を確認することと、動物実験のためのモデル作製の準備を目標とした。 PL-70、PL-17とPL-C1についてそれぞれ機能解析を進め、化合物刺激でのシグナル伝達系の解析を行った。 さらに化合物と相互作用する分子の探索を行い幾つかの分子に絞り込んだ。 また、動物実験についても骨髄移植モデル、ルシフェラーゼなどのトレーサー発現細胞移入モデル、創傷治癒モデルについてコントロール実験をおおむね実施できた。 以上の結果から、24年度の予定目標をおおむね達成することができた。

今後の研究の推進方策

24年度までの化合物による細胞遊走活性の解析を基にして、動物モデルを使って化合物の幹細胞遊走活性と創傷治癒の効果を調べる。得られた結果については学会や論文にて成果を発表する。 今年度の具体的な研究方針は、以下のとおりである。
1.細胞誘引作用の解析  先ず、化合物を尾静注または皮下注した動物において、その血中に間葉系幹細胞用の細胞が動員されてくるかをFACS解析やGFP発現骨髄移植モデルなどを使って検証する。 次に、動物体内の血流から化合物によって幹細胞誘引がされるのかを検証するために、ルシフェラーゼ発現間葉系幹細胞を尾静注した皮膚創傷モデルにて、化合物の投与での幹細胞の誘引作用を調べる。
2.誘引細胞の特定  マトリゲルプラグ法などで化合物に誘引された細胞をFACSや組織染色で特定する。具体的には、あらかじめトレーサー標識した幹細胞を検出することや、間葉系マーカーや線維芽細胞、血管細胞マーカーで分析する。
3.創傷治癒モデル  化合物の組織再生への影響を調べるため、全層欠損層からの創傷治癒モデルを作製し、化合物の単独塗布や足場分子との共存下で、創面積の縮小変化の計測、及び組織再生の質的な検討として組織染色法で評価する。

次年度の研究費の使用計画

特許出願を優先させたため論文投稿準備が遅れ、24年度の研究費に未使用分が生じたが、今年度行う予定の研究計画と併せて実施する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012 その他

すべて 学会発表 (3件) 産業財産権 (1件)

  • [学会発表] Ingredient in Mallotus extract enhances the motility of mesenchymal stem cells to regenerate injured skin

    • 著者名/発表者名
      Tadashi Furumoto, Yuta Inami, Misaki Toyoshima, Kaori Zaiki, Kosuke Fujita, Noriyasu Ozawa, Koichi Nakaoji, Kazuhiko Hamada, Akito Maeda
    • 学会等名
      第35回 日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      福岡国際会議場(福岡市)
  • [学会発表] Enhancement of the chemotactic activity of mesenchymal stem cells by components in Oenothera

    • 著者名/発表者名
      Akiko Kanda, Tadashi Furumoto, Yasuo Kanematsu, Akito Maeda
    • 学会等名
      第35回 日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      福岡国際会議場(福岡市)
  • [学会発表] クスノハガシワ含有成分による間葉系幹細胞の動員と皮膚創傷治癒の促進

    • 著者名/発表者名
      古元義、稲見雄太、豊島美咲、財木香里、藤田浩祐、小澤範恭、仲尾次浩一、濱田和彦、前田明人
    • 学会等名
      第12回 日本再生医療学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(横浜市)
  • [産業財産権] 間葉系幹細胞を皮膚組織へ誘導する皮膚外用剤2012

    • 発明者名
      前田明人・その他
    • 権利者名
      大阪大学・ピアス株式会社
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      2012-139442
    • 出願年月日
      2012-06-21

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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