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2011 年度 実施状況報告書

心筋前駆細胞のトランスクリプトーム解析による分化転換RNA分子の探索

研究課題

研究課題/領域番号 23618009
研究機関北九州市立大学

研究代表者

日高 京子  北九州市立大学, 基盤教育センター, 教授 (00216681)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードmiRNA / 多能性幹細胞 / 心筋細胞 / 細胞分化
研究概要

遺伝子の発現調節は細胞の分化や運命の鍵を握るものとして重要であり、なかでも発現の第一段階を調節する転写因子は特に重要である。例えば、転写因子の導入で未分化な細胞への転換に成功したのがiPS 細胞であり、他にも、さまざまな細胞種で分化転換が報告されている。一方、マイクロRNA (miRNA) と呼ばれる低分子RNAが転写後の発現調節を通して細胞分化や機能維持に重要であることがわかってきており、miRNAの導入によっても細胞運命を制御することが可能となりつつある。本研究は、心筋分化の鍵となるmiRNA 分子を同定することによって分化の道筋を解明し、非心筋細胞を心筋細胞に分化転換させることを目指すものである。近年、核酸医薬の開発が盛んに行われているが、低分子RNAの導入はタンパク質やDNAの導入に比べると容易であり、新しい心臓再生療法を開発するために、分化を制御する機能性RNA分子を探索することは極めて意義のあることと思われる。平成23年度ではマウスES 細胞より形成させた胚様体のトランスクリプトーム解析を行った。胚葉体は細胞塊を作らせることによって得られるものであるが、この中には心筋細胞のほかにさまざまな系譜の細胞が存在する。そこで、いくつかの異なった状態のサンプル(培養条件・分化日数が異なる胚様体)を準備し、発現遺伝子群を網羅的に調べ相互比較することによって、分化関連候補miRNAを絞り込むことを試みた。サンプル間の分化状態の差異を知るため、mRNAの網羅的解析も同時に行った。この結果、データベース上で心臓発生や疾患に関連づけられた多くのmRNAの発現が確認でき、心臓で重要と言われているmiRNA群も発現していることが確認できた。以上のことから、同様なパターンで発現している機能未知のmiRNAの中に、何らかの形で心筋分化に重要な役割を果たすものが含まれていることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の主たる目標は胚葉体由来細胞のトランスクリプトーム解析であった。当初は心筋前駆細胞を表面マーカーで単離する予定であったが、得られる細胞数が十分ではなく、培養条件の異なる胚葉体の発現比較解析に切り替えることによって、網羅的発現解析を行うことができた。本年度はトランスフェクションに関する予備実験が進んでおらず、次年度以降行う予定である。

今後の研究の推進方策

近年、同様なテーマでの研究が国内外で急速に進展し、いくつかのグループにより転写遺伝子やmiRNA導入による心筋への分化転換が報告されているが、その効率はまだ十分に高いとは言えない。将来への応用を考えると、分化転換という現象だけでなく、その基盤となるメカニズムを明らかにすることが重要ではないかと思われる。そこで、今後は網羅的解析によって得られた候補miRNA群の発現の確認実験を行った後、候補miRNAが心筋細胞分化に関してどのような役割を果たすのか、分化転換能力の有無を調べるとともに、機能面での解析も行うこととする。得られた候補miRNAの中には心臓で重要と言われている既知のmiRNA群(例えばmiRNA-133など)も含まれているが、これらを含む1つまたは複数のmiRNAによる分化転換能力、あるいはそれぞれのインヒビター分子による心筋分化の阻害効果について調べる予定である。これらの解析はin vitroで行う予定であるが、in vitroで心筋分化の観察が可能な胚葉体は細胞塊であるためトランスフェクションの効率が悪く、解析に適した細胞系やトランスフェクション法についての検討も合わせて行うこととする。これと平行して、心臓での機能があまり知られていないmiRNAについては、発現の確認とともに解析プログラムから予測される標的遺伝子についてその制御の有無を調べ、miRNAと標的遺伝子とのネットワークによる分化調節機構を明らかにしたい。以上のように、多能性幹細胞から心筋細胞が分化するメカニズムを解明することによって、最終的には非心筋細胞の分化転換という目標に近づけたい。

次年度の研究費の使用計画

候補miRNA群の発現をRT-PCRにて確認する実験を行う。miRNAのRT-PCRは特異的プライマーに利用できる配列が限られているため、特異性を高めるためのLNAオリゴ(修飾ヌクレオチドの一種)を利用する予定である。また、RNA分子の細胞への導入については、繊維芽細胞の他に分化途上の胚葉体を用いるなど機能解析に適した細胞の種類を検討しながら、効率の高い導入法を探すための予備実験を行う予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2011

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] Vgll2 regulates myosin expression and affects muscle performance2011

    • 著者名/発表者名
      本多賢彦、日高京子、須川涼、深田宗一郎、住江訓明、森崎隆彦
    • 学会等名
      第34回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2011年12月13日

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公開日: 2013-07-10  

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