研究課題
(1) さらに腫瘍形成リスクの低い細胞を得るための培養法の改良 マウス線維芽細胞にiPS化4因子(Oct4,Sox2,cMyc,Klf4)を発現するレトロウイルスを用いて遺伝子導入を行い直接誘導した神経幹細胞(diNSC)の培養方法を改良し、EGFを用いることによりNanog-EGFP含有率がほぼ0%になるような誘導条件を確立した。この誘導条件で作成した神経幹細胞はマウス線状体への移植においても腫瘍を形成せず、培養条件を最適化することによってdiNSCの安全性が実用レベルに達することを示すことが出来た。(2)ヒト細胞を用いて樹立された線維芽細胞から直接誘導した神経幹細胞の詳細な解析を行っていく。 さらに多くのヒト線維芽細胞を用いて、神経幹細胞の直接誘導を行った。市販細胞と生検細胞の計4種類の細胞でヒトdiNSCの誘導が可能であることを示した。誘導効率は細胞株ごとに差が認められたが、ほぼ全ての線維芽細胞で同様の方法で神経幹細胞を誘導することが可能であることを示した。以上の結果をStem Cells誌に投稿し、受理された。さらに、ヒトdiNSCではセンダイウイルスやエピゾーマルベクターなどを用いて将来の再生医療に用いることが出来るようなプロトコールの作成を目指した。しかしながらセンダイウイルスでのヒトdiNSCの作成はレトロウイルスと同じ方法では作成出来なかった。現在ヒトdiNSCにおいては、樹立方法を改良中である。
2: おおむね順調に進展している
H23年度は実施計画に基づきdiNSCの培養方法の改良を中心に研究を行った。実績概要に示したように、目標とする成果をあげることが出来た。さらに、これらの結果を含む内容で年度内に論文を投稿し、受理された。問題点としてはヒトdiNSCの培養プロトコールがマウスに比べると最適化が完全ではなく、収量、安全性に関して改良の余地はある。
最も推進すべき点は、将来の再生医療への使用を念頭に置いたヒトdiSNCの誘導プロトコールの確立と詳細な解析である。現在のプロトコールではヒトdiNSCはマウスdiNSCに比べると、収量および安全性に関しては今後も改良の余地がある。より安全性の高い細胞を安定して得られる方法の確立を目標とする。
ヒトdiNSCの誘導が、従来のレトロウイルスベクターだけでなくプラスミドやセンダイウイルスなどゲノム挿入の起こらないタイプの遺伝子導入で可能であるかどうかをさらに詳細に検討する。研究費の主な使用用途としては細胞培養と遺伝子導入に伴う消耗品の購入が中心となる。
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Stem Cells
巻: 10.1002/stem.1091 ページ: online
10.1002/stem.1091
Molecular Cell
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