研究課題/領域番号 |
23618011
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
永松 剛 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70453545)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 幹細胞 / 多能性 / リプログラミング / 分化 / 安全性 |
研究概要 |
iPS細胞由来の細胞による腫瘍化の問題を解決するために分化抵抗性を示す細胞に着目し、その分子基盤の解明からiPS細胞とES細胞の差異を明らかにすることを目的とする。iPS細胞とES細胞の最も大きな違いは外来因子を導入したことである。そのためiPS細胞とES細胞の差異を生み出す原因の有力な手掛かりとなることが考えられる。そこで外来因子の挙動を生細胞においてシングルセルレベルでモニターするシステムを構築した。これを用いて外来因子の不活性化の均一性や再活性化の有無そしてそれらと分化抵抗性との関係を解析している。iPS細胞誘導の各因子(Klf4, Sox2, Oct3/4, c-Myc)とヒトあるいはラット由来の細胞表面抗原を2A配列でつないだレトロウイルスベクターを作成した。このベクターを使うことによってそれぞれの因子の発現を細胞表面抗原に対する抗体とフローサイトメーターにより生細胞でモニターすることが可能となった。このベクターを用いてiPS細胞の誘導効率と外来因子の量比の問題を検討したところ、Sox2の発現が低いこととOct3/4の高発現が多能性誘導に深くかかわることが明らかとなった。一方でDsRedを発現するレトロウイルスベクターとともに樹立したiPS細胞を用いて分化の抵抗性と外来因子の再活性化との関係について調べたところ、分化抵抗性を示す細胞においてDsRedの発現のみられるものはなく、分化抵抗性は外来因子の再活性化によるものではないことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
未分化性を維持する培養条件と分化誘導条件下それぞれで培養したiPS細胞をNanog-GFPの発現を指標に分取し、マイクロアレイ解析を行っている。候補因子を絞るためにオープンソースのデーターを含め他のアレイデーターとの比較検討を行っている。今後速やかに候補因子をピックアップする。また、Tag付きベクターによるiPS細胞誘導効率の最適比を明らかにした。外来因子と分化抵抗性に関しては当初の予想に反して直接の関係がなさそうであることが分かった。このように当初の計画を着実に進めているものの、計画からは予想外の結果も得られており、達成度としてはおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
未分化性を維持する培養条件と分化誘導条件下それぞれで培養したiPS細胞をNanog-GFPの発現を指標に分取し、マイクロアレイ解析を行っている。この結果をもとに候補因子をピックアップする。分化抵抗性の損失または付与が行われるかを指標に原因遺伝子として同定する。同定された因子に関しては未分化性の維持に重要な転写ネットワークを形成しているOct3/4, Sox2, Nanogとの関係を手掛かりに作用機構について明らかにしていく。さらにマイクロアレイの結果の中から特に細胞表面抗原に着目し、未分化性を維持する培養条件と分化誘導条件下それぞれで培養したiPS細胞において実際にタンパクとして発現量が違い、選別のマーカーとなるような因子を探す。
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次年度の研究費の使用計画 |
iPS細胞の樹立およびに分化誘導系の培養に培地をはじめとする多種類のサイトカインおよびに低分子化合物を必要とする。今後さらに複数種類検討する予定でありその購入費にする。培養した細胞の解析に用いる抗体・試薬およびプラスチック器具等の消耗品にも必要である。さらに一部を旅費として情報収集等のための学術集会等参加と成果発表に当てる。
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