研究課題/領域番号 |
23650007
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
来嶋 秀治 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 准教授 (70452307)
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研究分担者 |
牧野 和久 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (60294162)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | アルゴリズム理論 / 脱乱択化 |
研究概要 |
マルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法などの確率的アルゴリズムの脱乱択化を目指し,決定的過程であるロータールーターモデルの解析に取り組んだ.ロータールーターモデルではグラフの各点に多数の"チップ"がばらまかれ,各時刻において,各頂点は今あるチップ全てを隣接頂点に順々に決定的にばらまく.各頂点上のチップの個数(正確には,各頂点のチップ数/全体のチップ数)がグラフ上のランダムウォークの"分布"を模倣する.大きな関心は,チップが1か所に固まることなく,ランダムウォークの分布をよく模倣できるかという点である. 従来のロータールーターモデルでは,単純ランダムウォークの脱乱択化しか扱うことができなかったが,本研究では多重グラフを利用したモデルを設計し,より一般のランダムウォークを扱うことができるようになった.特にMCMC法で仮定される有限グラフ上の可逆なランダムウォークに対しては,対応するロータールータモデルとの分布の誤差がチップの総数に依存しないことを示した.このことはすなわち,ロータールーターモデルのチップの総数を増やすことによりランダムウォークの分布をよりよく模倣できることを保証する.この成果の速報版を国際会議ANALCO 2012で報告した. この他,多重グラフを利用しないロータールーターモデルを新たに提案し,無理数を含む推移確率行列をもつランダムウォークを扱えるようになった.この成果について,第一報を国内の会議で報告した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
速報版が国際会議ANALCO 2012に採択され報告を行った.現在,完全版を雑誌に投稿中である.この点に関しては,概ね計画通りである.上下界ギャップの改善については現在解析途中であり,やや計画より遅れている.一方で,実数値を含む推移確率行列をもつランダムウォークにも適用可能な拡張モデルの設計に成功し,すでに一部の解析にも成功している.現在,より詳細な解析に取り組んでいるが,新モデルの提案に関しては計画した内容より進んでいる. 以上を総合して,概ね計画通りといえる.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,ロータールーターモデルの解析に取り組む.特に上下界のギャップの改善に関しては,上界が下がるものと予想しており,より精密な解析を行うことで上界の改善を目指す.また,実数値をとる推移確率行列に対しても適応可能な提案モデルについて,より精細な解析に取り組む.具体的には,ランダムウォークと提案モデルの単一頂点に着目したチップ数の誤差の上下界の算定を行う.従来モデルでは周期性に着目した解析を行っていたのに対し,提案モデルには周期性が無いため,新たな解析手法の設計を行う必要がある.確率論,計算量理論,アルゴリズム理論などで培われた技法を応用することで,この問題の克服を図る. 得られた研究成果は国際会議,学術雑誌等にて発表する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は理論研究が中心であるため,大半の経費を旅費に割り当てる.精度の高い議論を行うため,代表者と分担者が顔を会わせてのディスカッションを少なくとも年2回程度行う.この際の旅費に使用する.また国内外の会議に出席し,研究成果の報告ならびに最新の研究動向の調査を行う.この際の旅費,参加費に使用する.そのほか,提案モデルの解析手法の設計に必要となる確率論,計算量理論,アルゴリズム論に関する書籍の購入や,計算機実験に必要なソフト,外部メモリなどの周辺機器の購入にも使用する.
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