研究課題/領域番号 |
23650014
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
楠本 真二 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (30234438)
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研究分担者 |
岡野 浩三 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (70252632)
肥後 芳樹 大阪大学, 情報科学研究科, 助教 (70452414)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ソフトウェア / 印象 / 計測 / ソフトウェア保守 / ソースコード |
研究概要 |
本研究では,ソフトウェアに対する「印象」の計測,分析手法の確立を目指す.具体的には,ソフトウェアに対する「印象」の計測,分析手法の確立を,(A)準備, (B)ソフトウェアの印象の調査, (C)印象の計測手法の開発, (D)印象計測環境の構築と評価実験の手順で実施する. 平成23年度は,主に,(A)~(C)について行った.先ず,様々な分野で行われている印象に関する研究,各分野での印象の計測,分析手法について調査した.例えば,写真や絵から受ける印象を画像の特徴(明度,色度,彩度等)で計測・評価する手法,楽しさやさわやかさという運動時の印象を,心電図や呼吸頻度から計測・評価する手法などが報告されていた.次に,ソフトウェアの印象の調査としては,印象に影響を与えると思われるソフトウェアの複雑さや見やすさといった特徴を計測する手法は多く存在するが,印象そのものを評価するという手法は見つからなかった.最後に,印象の計測手法の開発であるが,ソフトウェア開発の中で最近注目を集めているソフトウェア保守におけるソフトウェアの印象をターゲットとした.手法開発の最初として,複数の被験者に対して,同一ソースコードを提示し,保守に悪影響を与えると思われる箇所(悪い印象を持った箇所)を指定してもらった.結果として,同じ箇所であっても,被験者によって印象が良いと判断される部分と悪いと判断される部分が多く見られた.その結果に基づいて,個々の被験者が悪い印象を持った箇所の情報に基づいて,別のソースコード上で同じ特徴を持つ箇所を提示するツールの試作を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の計画は,以下の(A)~(C)であった.(A) 準備: 様々な分野で行われている印象に関する研究について調査し,各分野での印象の計測,分析手法について検討する. (B)ソフトウェアに対する印象の調査: ソフトウェア開発に関係する各種プロダクトとそのユーザの典型的な組み合わせを設定し(例えば,設計者と要求仕様書,プログラマと設計書,テスターとテスト仕様書等),それぞれのユーザにプロダクトに対して感じる印象にはどのようなものがあるか,印象のよいプロダクトとはどのようなものか,ということを調査する. (C) 印象の計測手法の開発: (B)で調査した結果に基づいて,ユーザが感じる印象を定量的に計測するための方法を開発する. 研究実績の概要で述べた通り,(A)~(C)についてそれぞれ実施している.また,平成24年度実施予定であった計測環境(ツール)の構築についても一部実施した.
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の結果に基づいて,ソフトウェア保守において対象となるソースコード上で悪い印象を判断される箇所を提示するツールの開発を目指す.具体的には,ユーザがソースコードを目視し,自分が悪い印象を持った箇所を複数指定する.ツールはその指定された部分の特徴を解析し,同じような特徴を持つ部分を他のソースコードから抽出し,ユーザに提示する.平成23年度の結果,同じものを対象としても印象の個人差が多いことが確認されている.従って,印象の計測は人によって異なるため,その人に特化した印象の評価方法を実現することを考えている.このツールが実現すれば,ソフトウェア保守において保守担当者が保守において注意すべき箇所を自動的に抽出できる.もちろん,結果は人に依存するため,保守担当者がある程度経験や能力を持っていれば,非常に強力な支援ツールになると考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
計測ツールの実装のためのパソコンの購入,パソコン上で必要なソフトウェア,研究成果の学会等での発表旅費,発表論文の印刷代,ツール開発や資料整理の謝金を主な支出と考えている.なお,平成23年度予算の一部を平成24年度に繰り越したが,それは研究成果の国際会議での発表,意見交換のための旅費等で使用する予定である.
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