研究概要 |
本研究では,ソフトウェアに対する「印象」の計測,分析手法の確立を目指す.具体的には,ソフトウェアに対する「印象」の計測,分析手法の確立を,(A)準備, (B)ソフトウェアの印象の調査, (C)印象の計測手法の開発, (D)印象計測環境の構築と評価実験の手順で実施する. 平成24年度は,主に,(C)~(D)について行った.平成23年度からの継続として,印象の計測手法の開発であるが,先ず,ソフトウェア開発の中で最近注目を集めているソフトウェア保守におけるソフトウェアの印象をターゲットとした.複数の被験者に対して,同一ソースコードを提示し,保守に悪影響を与えると思われる箇所(悪い印象を持った箇所)を指定してもらった.結果として,同じ箇所であっても,被験者によって印象が良いと判断される部分と悪いと判断される部分が多く見られた.その結果に基づいて,個々の被験者が悪い印象を持った箇所の情報に基づいて,別のソースコード上で同じ特徴を持つ箇所を提示するツールの試作を行った.更に,ソースコードの複雑さを評価するメトリクスとして代表的なサイクロマチック数について,開発者の印象に合致するような改良評価手法を提案した.具体的には,人が複雑だとみなすソースコードを識別するために,ソースコード中の繰り返し部分を簡略化してメトリクスを計測する手法を提案した.提案手法の有用性を確認するために,オープンソース・ソフトウェアに対してメトリクスを計測し,手法適用の有無による比較を行った.その結果,提案手法を適用して計測したメトリクスは,人間の印象・主観による複雑度の評価に近いことが確認できた.
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