研究課題/領域番号 |
23650017
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小林 泰三 九州大学, 情報基盤研究開発センター, 学術研究員 (20467880)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | マルチスケール / マルチフィジックス / 分離解法 / 連成計算 / 連成・連携計算 |
研究概要 |
本年度は本研究の開始年度であり、マルチスケール・フィジックスな計算対象を選定し、分離解法(連成・連携計算)機構の概念設計を行った。マルチスケール・フィジックスな計算対象としては、研究計画の通りにエアリード楽器の発音機構を選定し、流体計算と連成させる音場ソルバーを 2,4-FDTD 法で実装した。流体と音場のソルバーを相互連成させるには、互いの系で位相誤差が揃っている必要がある。これはそれぞれの系での「時計の進み方」が異なると、連成のために指定時刻でのデータ交換が困難になるからである。H23年度に開発した音場ソルバーを音速の再現で評価したところ、5桁の精度で位相誤差が押さえられている事が判り、連成計算のソルバーとして使用可能であると判断している。次に、連成計算をする時に必要な要素技術である、計算中に外部から計算値を制御する技術の試験実装を OpenFOAM のソルバーに rhoPisoDyMFoam として実装した。これは、移動境界問題に対する実装になっており、計算途中に動的にメッシュの位置を変化させる機能を rhoPisoFoam に対して付加したものになっている。rhoPisoDyMFoam で平板を正弦振動させて音波が正確に生成される事を確認した。メタソルバーの機構の概念設計は次に述べる状況まで進展した。計算対象に対するルールを記した "axiom" と、具体的な制御の条件を記した "config" の二つのファイルを用い、これに実行中の系のモニタリングから届けられる情報の3つを合わせて全体の整合性を判定する "core" があれば、シンプル且つコンパクトに実装できる見通しを立てられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
連成計算に必要な要素技術のうち、ソルバー側に属するものを実装する事ができた。具体的には音場の計算をする為の FDTD-2,4 法を実装し、連成に必要な諸条件(数値誤差の特徴と大きさ)の確認を行った。メタソルバーに関しては、若干の遅れが見られるものの、H23年度中に新たな研究分野の研究者との交流が生まれ、それらの研究成果と併せれば大きな進捗の遅れは生じないと判断している。具体的には、ストレージを介さずに計算結果をダイレクトに可視化プロセスに繋げるメモリートゥーメモリー技術を開発している NICT や、学術クラウドの利用方法や管理運用を研究開発している北大、東工大、NIIと議論を重ねる事により、連成計算のメタソルバーに求められる機能の整理を行う事が出来た。従って、メタソルバーの研究開発については、昨年度は予備研究的な位置づけになり、当初の予定よりも若干遅れている。しかし、実装にあたって問題になる箇所の把握も進んでいるので、概ね順調に研究が進展していると評価する
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今後の研究の推進方策 |
ほぼ当初の研究計画通りに進行しており、H24年度も引き続き研究計画に沿って研究を進めていく。本年度は、流体と音の連成計算の実行と、その為に必要なメタソルバーの実装を進めていく。研究の中心は、ソフトウェア開発とテストであり、大規模な機器の購入予定はなく、主に共同研究者との議論と実装が研究の中心になる。連成計算の実行は、まず、流体計算から求めた Lighthill の音源分布を昨年度開発した音場ソルバーに渡して圧縮性流体と音場ソルバーでの音場の再現比較を行う。その際には流体の圧力と流速のデータをそのまま全て音場ソルバーに渡して行う。次いで平行して開発を進めるメタソルバーを用いて、リアルタイムに有効な Lighthill 音源を選択して音場ソルバーに渡す機構を開発する。これにより、メタソルバーを用いた連成計算の原型を実証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
H23年度は、当初の予定よりも物品に費やす率が高くなってしまったが、本年度は計画通り旅費が中心になる予定である。
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