研究課題/領域番号 |
23650019
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
中島 震 国立情報学研究所, アーキテクチャ科学研究系, 教授 (60350211)
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キーワード | ソフトウェア工学 |
研究概要 |
本研究課題では、システム運用開始後に、利用者の振る舞いなどに起因して発生する実行時干渉を「柔らかな不具合」と定義し、オープンなシステムの代表例であるWebアプリケーションを具体例として、「柔らかな不具合」の実行時検出と不具合への対応を目的とするシステム機能の改修方式についての研究を進めた。 今年度は、システム機能改修の正しさを系統的に論じる方法を提案し、本研究課題で対象としているWebアプリケーションの事例での修正が、本提案方式で、明確に説明できることを示した。第1に、システム機能改修とは、ある時点で作動しているプログラム(S0)を新しいプログラム(S1)に置き換えることであるという観察に基づき、S0をS1に変更する「置き換え可能性」の方法を導入する。第2に、この一般的な「置き換え可能性」をみたし、さらに、アプリケーション機能と整合性の良い順序関係を求める、という方法である。Webアプリケーションでは、サーバ側で管理している永続的なデータ(データベース)の値が重要であるという観察から、置き換え可能性として、インテグリティポリシーを採用した。この方法は、従来提案されていた置き換え可能性(たとえば、サブタイプ関係、リファインメント関係、模倣関係、等)と異なり、S1が機能制限された場合を扱うことができる。つまり、本研究課題の対象である自己適応システムにおける置き換え可能性は、従来の方法とは異なる特質を持つべきことがわかった、といえる。 以上の成果を、国内外で発表することで、要求工学や自動検証に関わる研究者と技術的な交流を行い、本研究の意義を確認できた。なお、前年度の成果(実行時干渉発生確率の予測)がジャーナル論文として採択、公表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画とおり、「柔らかな不具合」に対する修正の正しさを論じる系統的な方法を考案し、例題を用いて、その有効性を確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に計画していた国際学会での発表が、開催地(バンコク、タイ)の政治的な事情から渡航が困難となり、取りやめとなった。今年度に提案した「置き換え可能性」に関する研究の成果発表を完了することが残されている。さらに、本研究課題では、Webアプリケーソンを対象とした研究であったが、今後、これとは異なる性質を有するソフトウェアシステムにおける「柔らかな不具合」として、スマートフォンの電力消費問題に関わる研究につなげていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた国際学会発表に関して、開催地(バンコク、タイ)の政治状況が悪化したことから、海外出張を取りやめることとなった。この海外旅費について使用残が生じた。 本研究成果に関わる研究調査ならびに提案方式の新しい適用対象ソフトウェアシステムの技術調査を目的とする海外旅費として使用する。
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