研究課題/領域番号 |
23650030
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
戸出 英樹 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20243181)
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研究分担者 |
谷川 陽祐 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90548497)
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キーワード | コンテンツベース交換網 / 光ネットワーク / 波長分割多重 / ハイブリッドネットワーク |
研究概要 |
本研究では,様々な種類の大容量通信を伝送・交換することができる将来のネットワークアーキテクチャの確立を目的として,これまで個別に研究開発が進められてきた光回線交換網,光パケット交換網,光バースト交換網などの将来ネットワークに対し,それらをコンテンツ転送という視点から統一的に扱うことが可能な新たな光・電気融合ネットワーク基盤を提案し,継続して詳細設計を行った. 全光の交換処理ではなく,特定の中継ノードで光電変換を伴うトランスルーセント(半透明)な光ネットワークにおいて,転送コンテンツのサイズと各中継ノードにおける波長・メモリなどのネットワーク資源の利用状況に基づき,光電変換処理及び蓄積転送処理を行うべき必要最低限の中継点を自律的に決定する制御を確立し,そのシグナリング規律を詳細に設計した.さまざまな条件におけるシグナリングを網羅的に抽出し,適切な手続きを明確化した.また,計算機シミュレーションによる性能評価を通して,各種交換原理を統一化した提案方式により,コネクションの接続成功率が向上することを定量的に明らかにした. 転送対象である情報(コンテンツ)を一体として伝送するという斬新な原理を導入し,情報転送の単位をパケット,部分ファイル,完全ファイル,複数ファイル集合など,任意に設定可能とすることにより,従来のTCP/IPネットワークにおける情報の細断に伴う不到達問題や順序逆転問題,部分再送問題などの複雑性を原理的に解消できることを示唆した. 送受信ノード間距離が離れた通信に対して,特に接続成功率が低下するという接続品質の不公平性問題に対し,優先利用波長領域を導入し,適応的にその優先領域を変更することにより,長距離大容量伝送の要求に対する接続成功率を向上させ,公平な接続品質を達成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請課題では、将来の全光ネットワーク基盤と連携可能であるコンテンツ配信指向のフレキシブルなネットワーク基盤のあり方に関して、情報の交換・転送単位を敢えてコンテンツそのものに拡張した「コンテンツベース交換網」という新たなパラダイムを提唱し、技術的課題を抽出するとともに、有効性を定量的に明らかにすることを目的としているが、本目的に対し、新方式を提案し、きわめて詳細に設計を行った。本方式では、経路に沿ったシグナリングを経て適切なコンテンツ交換ノード間で、互いに独立なコンテンツ単位の蓄積・交換・転送を行う。もし、波長・メモリ資源に余裕があれば、適当なノードを光レベル/電気レベルの優先順位でカットスルーするが、その際に重要なポイントとして、各ノードの交換パラダイムをどのように規定するか、どのように変更するかという点があげられる。その重要ポイントに対する解を厳密に提示した。ノード構成法、シグナリング、コンテンツサイズや多重波長利用を考慮に入れた転送スケジューリング規律などを総合的に提案することができた。本方式では、原理的には全光レベルのスイッチング機能を必須要件とせず、光信号劣化の補償機能を劇的に軽減できる。さらに、原理的にトランスポート層プロトコルを軽減したシンプルなアーキテクチャが実現可能となる。基本提案方式の性能を計算機シミュレーションにより明らかにし、ベースとなる光回線交換との性能差を明確に示した。このように、当初の予定以上に優れた方式の立案と性能評価を行うことができ、本成果により、1名の博士(工学)の学位を取得する学生を輩出するに至った。その博士学位論文の内容は、本申請課題の成果そのものであり、英文で137ページに及んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題に対し、提案方式の普及問題・経路制御問題に関する評価,拡張を行う予定である。普及問題に関して、現状の光回線交換網に対し、提案アーキテクチャに従う新規ノードを部分導入した場合の性能を接続要求に対する失敗率の面から定量的に明らかにする。経路制御問題については、負荷分散を考慮した事前経路設定法を中心に研究を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は詳細な性能評価を通じて総合的な提案方式の確立や拡張機能の検討を行ってきたが,その過程で当初予定していなかった提案方式の普及問題・経路制御問題に関する評価,拡張を行うべきと判断した.そこで,研究期間を延長して対処するとともに,今年度に予定していた研究調査,成果発表の一部について,普及問題も含めて来年度に行うよう変更したことで学会参加に要する旅費,参加費,論文別刷費に関する未使用額が発生した. 次年度に予定変更した研究調査,成果発表に必要な旅費,学会参加費,論文別刷費に使用する予定である.普及問題、負荷分散を考慮した経路設定問題に関する成果として,提案方式が部分的に普及した環境について提案方式に対応するノード割合の変化に対するコンテンツ転送成功率の評価や,提案方式に適した負荷分散型の経路選択方式の有効性実証等を目標とする.次年度後半にこれらの成果発表を,前半には関連する研究調査を行う.
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