本研究では、実用性(低コスト、簡便性)を考慮した上で、視聴者に可能な限り高密度5次元光線情報の再生を実現するためのシステムを構築することを目的とする。具体的には、はじめに視差間隔1mmの超多眼ディスプレイを設計、試作した。これにより5次元情報のうち4次元情報を支援することができる。続いて、本システム上に提示するコンテンツを3DCG映像に限定した上で、無知覚視差法と呼ぶ方式を提案し、微量の運動視差をコンテンツ側で生成するソフトウェア技術を開発した。以上の技術を組み合わせることにより、1視点限定、提示コンテンツが3DCG限定ではあるが、5次元光線情報を完全再現することを可能となった。 平成24年度は、本研究最終年度であり、前年度の設計をもとにシステム試作、システム評価を行った。まず、前年度の成果をもとに3D交線情報を高密度に表示するシステムについて、試作を行った。本試作システムは、市販プロジェクタ24台を用いながら、1mm未満の間隔で提示する超多眼システムとして構成した。市販プロジェクタを用いた構成により、低コスト化、システム柔軟性、故障耐性などの多くのメリットがある。 続いて、この24眼超多眼システムにおいて、無知覚視差法と呼ぶ新しいコンテンツ提示方式を提案し、実装した。無知覚視差法とは、3DCGコンテンツを対象に、人間が明示的に知覚できない間隔で微量の視差を作り出す表示技術である。本研究では、この技術により、人間の3D知覚特性が大幅に改善できることを実証した。
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