研究課題/領域番号 |
23650040
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
蔡 東生 筑波大学, システム情報系, 准教授 (70202075)
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キーワード | 共感覚 / クロスモダリティ / クラスタリング |
研究概要 |
近年では、複数のモデリティに入力された情報の総合処理(クロスモーダル総合)について、多くの研究者が注目を集めている。特に人間ロボットの設計製造及びメディア作品の音色デザインにはクロスモダリティという要素が注目されている。クロスモデリティは人間の異なる複数の感覚間の繋がりを表しており、人間の創造性と深く関係している。共感覚は、一つの刺激から、複数の知覚が無意識に引き起こされる知覚現象である。先行研究により共感覚者はクロスモダリティが感じられるが、一般人は潜在的にクロスモダリティを持っていると言われている。 本研究では共感覚の一つ色聴という特殊な知覚現象に注目し、色聴共感覚の一貫性テストを行い、テストから得た音高、和音、調性データを分析し、音と基本色彩語色との結び付ける方法(クロスモーダルマッピング)を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
クロスモーダルメカニズムを検証し、理論モデル化するため以下の研究をおこなった。基本色彩語(BASIC COLOR TERMS)とは日常生活のコミュニケーションの手段として最も基本的な色単位に分類したものである。すなわち、ある限られた範囲の色に与えられた固有の名前ではなく、色空間全体をいくつかの色名で概念的に把握するための言葉であり、多くの者が幼少時に文化的背景に応じて最初に覚える色の名前である。1969年にアメリカの文化人類学者Berlinと言語学者Kayによって発表された報告によれば、さまざまな言語圏において共通する2個から11個の基本色彩語が存在する。民族の文化発展及び言語体系に応じて導入される順序は「黒、白、赤、緑、黄、青、茶、紫、橙、ピンク、灰」ということが明らかで全部で7種類の進化ステップがこの世界に存在している。日本語は11種類の基本色彩語を持っている。本研究では特に日本語の基本色彩の分布に注目し、色聴共感覚一貫性テストの色データが基本色彩語とはどんな関係で対応しているかもしくは近似な分布かを収集した被験者のデータをもとに、Earth Mover's Distanceで比較する距離と、共感確度の相関度をはかり回帰分析により、P<5%で、共感覚者が感じえらぶ色が基本色彩色であることを検証した。 高得点共感覚者における音高・和音・調性三つ種類の項目に対してクラスター分析をした。日本基本色彩語の10種類(黒抜き。色聴者により黒は無音の状態に表現することがわかる)の中心点が重心の初期値として行った。多くの項目に対して上位三色が全体の0.5あたりの割合があり、平均値は0.61となされる。各列について色の順番は各自のクラスター数によって決め、上位の色に注目すると、先行研究とはほぼ一致する
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今後の研究の推進方策 |
本研究では共感覚の色聴という特殊な知覚現象を利用し、色聴共感覚者の一貫性テストから頂いた音高、和音、調性データを集めた。テストの結果から高得点の色聴知覚を持つ被験者の色データを特別に分析し、色聴共感覚というクロスモーダル感覚の対応関係の一貫性を検証しメディアデザインへ応用することである。 今後の推進方法としては、基本色彩であることが分かったのでこれを利用して、ファンタジアなどのアニメにおいて、音楽と色彩がどのようにクロスモーダルに利用され、その技術がどのような物かを調べることである。被験者をあつめテストするだけではなく、高得点の被験者に個人的な調査、脳科学計測も必要と考える。また、ファンタジア(作者が共感覚者の可能性がある)の分析を統計的に行う。なお、色聴感覚の持つ被験者とコントロールのMEG計測データを収集し、聴覚刺激による視覚刺激が色知覚野と小脳の同期的活動を誘発するメカニズムのモデル化を機能的・解剖学的方法を用いて研究する予定である。最終的には、ファンタジアなどのアニメを利用したテストを予定。分析において、従来のヒストグラムによる色分布表現では、ヒストグラムのビンが固定であるため表現力が不十分であり、またヒストグラム間の比較尺度が人間の感覚に合わないことがあるといった欠点である。今後はシグネチャを対象に応じて要素数、ビンの代表値を変え柔軟な比較を行う。また、EMDは他の尺度より人間の感覚に近いことが報告されており、これを利用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.Web共感覚テストHP維持のためのアルバイト費:多くの色聴者は、調に色彩とイメージを感じており、調を基準に、音階、和音に色彩、イメージを感じている。共感覚Webテストで最後に行う、聞き取り調査で判明したことは、多くの共感覚者はそれぞれの色に独特の質感・イメージを感じていることであった。本研究では、これらの聞き取り調査を基に、Webテストのカラーピッカで色を選んでもらったあと、共感覚者への聞き取り調査を基に触感テストを作成する. 2.情動知能と色のクロス・モダリティの分析のためのMEG脳計測費:共感覚テストの結果は、音階、和音、調テストごとにクラスタ分析を行い、色彩、質感、イメージに対して、クラスタ分析で使われるシルエット値をもとめクラスタ数とクラスタ中心を決定する。今回のテストでは、被験者に事前に色を感じる一文字の人名を100以上列挙してもらい、一貫性テストをおこない、そのデータからcongruent, incongruentテストを作成し、MEGで脳計測する予定。 H25年度は既存の設備を活用して収集した脳科学計測のための基礎データを基にして、H24両年度の予算を使用してMEG実験等を行う。
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