研究課題/領域番号 |
23650041
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金井 崇 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (60312261)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | グラフィクス / 物理法則アニメーション / 粘弾性体 / SPH法 / シェイプマッチング法 / GPU |
研究概要 |
本年度に関しては,主に統一的物理法則アニメーション手法の確立,および,サンプル実装と評価について行った.基本的には流体シミュレーションと弾性体シミュレーションを融合する形で進めていった.融合する上で考慮しなければならない要素として,(1) 二つの手法を同じ形状表現の下で実行できること.特に,流体を扱う上で必要な内部構造の変化に対応できるような表現であること.(2) 表面形状の品質が高いこと.このことは,CGの分野での利用において最終的な映像を出力する上で非常に重要である. 流体シミュレーションについては,粒子法の一つであるSPH法を,弾性体シミュレーションについてはシェイプマッチング法による形状変形手法を利用した.これら二つのシミュレーション計算を次のように統合した.あるステップにおける現在位置の点群において,それぞれ流体もしくは弾性体と考えた場合の力の計算を行い,更新速度および更新位置を求める.それぞれ別に計算された二つの更新位置を一つのパラメータにより線形補間することで,二つの材質の中間的な振る舞いとなる挙動を実現した.シミュレーションのための形状表現としては点群表現を用いた.特に,流体の振る舞いに近い動きの場合は内部構造が動的に変化するため,点群表現にすることの利点は大きい.さらに,弾性体に近い動きの場合においても,破壊や破砕が起こる場合には,内部構造の位相変化を考える必要がある.点群表現を用いることでこれらの現象をも実現できる.表示のための表面形状に関しては,点群に対して陰関数曲面を割り当て,陰関数曲面が構成する空間距離場の等値面を抽出することでポリゴン形状を得た.サンプル実装の結果,シミュレーションのみの場合は15~25fpsの速度で実行できること,表面抽出とレンダリングを含むと,0.5~5fpsまで速度低下が起こることが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究の目的である,統一的物理法則アニメーション手法の確立,および,そのサンプル実装と評価については達成できている.サンプル実装において,表面抽出とレンダリングを含むと速度低下を起こすことは,事前に予想されていた結果であり,この点に関しては次年度の研究において取り組む予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今後については,GPU・マルチコアCPUによる並列化の他,高品質な表面形状生成について検討する.GPU・マルチコアCPUを使った並列化については,流体シミュレーションのGPUによる実装を参考にすることができ,並列化による高速化が十分に期待できる.ここでは統一的シミュレーションの計算や表示を含むすべてをGPUで行うことを考える.シミュレーションのうち流体のSPH法に関しては,すでに過去にGPUで実装された研究が発表されており,そのまま流用できるものと期待できる.弾性体のSM法に関しては,特にGPUでの過去の実装例は見受けられないが,本質的にはある点の周りの隣接点に関する処理が主であり,SPH法と大部分の実装部分を共有できるものと考えている.表面形状の高品質化に関しては,球体陰関数曲面の組み合わせによる空間距離場を用いている性質上,現状では必要以上に滑らかな形状になってしまう.これを回避するため,球体以外の陰関数曲面を用いることや,曲面追跡による直接的な表面生成手法について試行する.また,これらのGPUによる高速化についても検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度においては,GPUによる高速化を行うためのコンピュータやグラフィックボードの購入,および,出張旅費,会議参加費,英文校正代等に使用する予定である.なお,本年度は当初予定していた国際会議への論文の投稿をせず,国際会議への参加を取りやめたため,その分を次年度に合わせて使用する予定である.
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