研究課題
本研究の目的は,対象物内に適切なテンソル場を定義し,その特異点特徴を利用して小六面体集合の全体的な配置を制御することで,有限要素法解析に必要な前処理である,対象物内に質の高い六面体メッシュを生成する手法を構築することにある.具体的には,A)対象物体の境界条件からの物体内テンソル場補間,B)生成したテンソル場内に存在する特異点特徴抽出,C)特異点特徴を利用したテンソル場からの六面体メッシュ変換の3つの手法を構築する必要がある.平成23年度は,上記の3つの手法の構築を,先に2次元の場合(2次元ベクトル場から四辺形メッシュへの変換)の定式化を検証・評価まで含めてある程度終了させるとともに,3次元の場合の下準備まで行うことに成功した.最初は,境界条件からA)2次元テンソル場補間を発生させる.この段階では,ポアソン方程式の計算アルゴリズムを拡張してテンソルのサイズと向きを,対象物内に滑らかに生成することに成功した.その後,2次元テンソル場におけるB)特異点特徴抽出を行う.ここでは,似た大きさや向きを持つテンソルサンプルをクラスタに分割し,特異点位置の同定を図る.さらに最後のC)四辺形メッシュ変換は,テンソル場で生成される異防錆特徴を流れ場として抽出し,その双対を求めることで,最終的に四辺形メッシュへの変換を実現した.さらに生成した四辺形メッシュの,個々の要素である四辺形の形を評価することで,本手法で生成される四辺形メッシュと従来手法のそれを定量的比較することに成功した.結果として,本手法はある一定の質を保った四辺形メッシュを,ユーザの制御の元で生成できることが分かった.また,付随する研究成果として,3次元メッシュの扱いに関する幾つかの手法の開発にも成功した.
2: おおむね順調に進展している
本年度は,最終的な目的として掲げる六面体メッシュ生成の一次元低次の問題として,四辺形メッシュ生成を2次元テンソル場を介して設計する手法の構築を目指していた.その点においては,最終的に四辺形メッシュの生成までシステムの実装を行うことができ,その生成されたメッシュの質のある一定の評価を行うことができた点で,おおむね順調に研究計画は進展していると考える.また,3次元の六面体メッシュ生成の下準備もある程度済んでおり,その点でも本年度の進捗は評価できるものと考えている.
今後は3次元テンソル場から,六面体メッシュを生成する研究を進めていくが,3次元テンソル場の補間手法についてはほぼ実装が終了しており,また境界部分から内部のテンソル場を生成する枠組みは2次元の際に用いたポワソン方程式に基づく手法が比較的単純に拡張できると考えられる.そのため,集中して取り組んでいくのは,3次元テンソル場から六面体メッシュの双対に当たるシートと呼ばれる内部曲面の生成と,その位相的構造の抽出である.従来の六面体手法は,全体の内部曲面の位相的構造のひずみが,局所部分に集中するために六面体格子が生成できない部分が生じる.本手法では,そのようなひずみを空間全体にじょうずに分散させることで,全体として六面体メッシュの位相的構造が生成できるようにする点が最重要課題となる.その後,生成したメッシュの定量的な評価も行なっていく.
次年度は,研究成果を発表するための準備や旅費に研究費を割り当てていくこととなる.また,メッシュ生成のための並列計算の実装を視野にいれて,マルチコアやGPUなどのハードウェアの準備も,研究費使用計画に一部含めていく予定である.
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
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