NASAのアポロミッションで得られた膨大な量の月震データを用いて,現在も月震の発生原因及び震源の分類が人手によって続けられている.しかし,膨大な量の波形データから,月震データ間の類似性を把握することは困難である.そこで本年度は前年度のアプリケーション・プロトタイプの検討結果を踏まえて,月震データの解析研究を促進できるようにするため,波形の類似性を考慮した月震データを可視化するためのWebシステムを実装した.本システムでは,類似するデータをまとめて可視化するのに適したSelf-OrganizingMaps(SOM)を用い,月震データを2次元空間上へマッピングする.また,処理のバックエンドには分散並列計算のソフトウエアプラットフォームの一つであるHadoopを用いることで,膨大な量のデータに対するSOMの処理に対応する.特に大量の生データから,類似性を計算するために適した特徴を抽出し,変形するところでHadoopによる並列計算が有効であることが判明した.実装システムはWebインターフェイスを通して,SOMの結果及び月震データを提示することができるようにした.これにより情報学における大量時系列データ処理の技術革新を行うだけでなく,月震データの解析研究の促進を図ることが期待される.研究成果は,平成24年度にJAXAが主催で開催された宇宙科学情報解析シンポジウムにて口頭発表を行い,情報学研究者だけでなく,専門家からも注目された.
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