研究課題/領域番号 |
23650052
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
藤代 一成 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (00181347)
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研究分担者 |
高橋 成雄 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (40292619)
森 眞一郎 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20243058)
小山田 耕二 京都大学, 高等教育研究開発推進センター, 教授 (00305294)
伊藤 貴之 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (80401595)
奥田 洋司 東京大学, 人工物工学研究センター, 教授 (90224154)
茅 暁陽 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (20283195)
竹島 由里子 東北大学, 流体科学研究所, 講師 (20313398)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 計算報道学 / 可視化 / オントロジー / 説明責任 / 出自管理 |
研究概要 |
本研究の目的は,「説明責任を負った事実伝達の視覚方法論を確立する」という,データ可視化の定性的側面に注目した最新の研究課題である「計算報道学(computational journalism)」に焦点を絞り,その体系化とラピドプロトタイピングによるか課題抽出を行うことである. 初年度の本年度は,計8名の研究実施者が近年従事してきた具体的な関連研究開発事例から計算報道学を特徴づけると考えられる項目を抽出し,世界初の専用オントロジーの基本デザインを実施した.特に,従来から指摘されてきた「出自管理」による報道品質の管理に加え,先端的な情報通信メディアや数理的知見を利活用することから生まれる,現実報道では実現不可能な特徴として,「超実時間性」と「時空間網羅性」の2点を指摘した.また,報道のフィールドに人間が必ず介在することを意識した特徴として,「第一人称性保存」,「オーディエンス主導」,「知覚的許容デフォルメ」の3点を抽出した.以上の成果は今後の階層的オントロジー構成への布石となった. さらに,計算報道学とほぼ同義の概念として,「視覚協創学(visual synergetics)」なる領域の基本構成をとりまとめた.そこでは,新たなデータ可視化の枠組みである「視考支援基盤」により,対話的な操作環境のなかで視考する個々のユーザの挙動や知覚心理を監視し,基盤自身がもつ出自管理や機械学習の機能を協働させることにより,視覚的表現をより洞察に富むものへと組織的に接近させ,最終的に問題に対する本質的で総合的な理解,すなわち知の創発を関係者全員に対して確実にもたらすような視覚解析環境を実現する.この視覚協創学に関しては,科学研究費補助金新学術領域(領域提案型)への応募も試みた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では,初年度までに計算報道学オントロジーの開発を終えているはずであったが,さまざまな要素が複合している計算報道学の基本的性質を解明する点に手間取り,現時点ではその基本デザインでとどまっている.しかし得られた知見は斯界において類を見ず,必ずや次年度のオントロジー構築やラピドプロトタイピングに効果的につなげていけると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
(1) 2012年5月に京都で開催される予定の第17回計算工学講演会において,「計算可視化の基礎とその応用」と題するオーガナイズドセッションを半日実施することが決定している.そこで本研究の実施者8名による9件の連続講演を実施し,計算報道学(視覚協創学)の役割と価値について,計算工学に従事する研究者や実務家と忌憚のない意見を交わし,内容を深化させることを目指す.(2) さらに,(1)での発表のなかから,効果的にラピドプロトタイピングに適した計算報道機能と応用事例も選出する予定である.同じ年度に終了予定の基盤研究(B)で開発している可視化出自管理システムVIDELICETの基本機能も同期して拡充されているはずなので,年度後半には効率的なプロトタイピングが実施できると予想される.(3) 最終成果は,当初の予定どおり,有力国際会議への論文投稿や国内有力学術誌における特集記事編纂に加え,最終年度内に共立出版から発刊予定の教科書「可視化」においても同分野の最新研究動向の一つとして紹介していきたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の計算工学講演会に加え,年度後半に再度,全体ミーティングを予定している.さらに研究実施者8名各自の役割・分野において情報収集・研究発表に係る旅費・会議参加費が主な使途となる.場合によっては,著名な関連研究者からの情報提供も仰ぎたい.最終年度に向けて研究内容をアーカイブし,成果を公開する上で,情報整理のアルバイト謝金も相応額必要となる. 分担者の小山田(京都大学)には特に関西圏の研究の取り纏め,竹島(東北大学)にはプロトタイピング作業を担当してもらっている.研究全体のオントロジー開発が予想以上に手間取ったことにより,それぞれ調査研究,実装作業の計画遂行に遅延をきたしている.次年度はより緊密な連係をとるため,打合せの回数も増やし,本来の研究目的遂行に万全を期す所存である.
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