研究課題/領域番号 |
23650055
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
上平 員丈 神奈川工科大学, 情報学部, 教授 (50339892)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | マルチメディア / 情報セキュリティ / 光情報処理 / 不可視情報 |
研究概要 |
初年度の平成23年度は本技術の実現性を確認した。本技術の実現にとって、光に埋め込まれた情報の不可視性と可読性を両立させることがカギとなる。今回は、本技術を人の顔の肖像権保護に適用するという具体的な応用を想定して、この応用における環境において不可視性と可読性が両立する条件を調べた。さらに、人の顔のように被写体表面が平面でない場合は光で投影された情報に歪が生じるが、このような場合でも情報を正確に読み出せるロバストな情報生成法を実験により明らかにした。本年度の具体的な成果は下記のとおりである。1)実験システムの構築:まず、研究実行のためのプラットホームとなる実験システムを構築した。本実験システムは、情報の不可視パタンへの変換、空間変調器による光パタンへの変換、空間への投影、撮像装置による空間の撮影、および撮影画像から原情報の抽出のための各処理を実行するソフト、ハードで構成した。2)不可視性と可読性が両立する条件の明確化:本研究では情報を不可視とするため、目の知覚限界以上の空間高周波成分によるパタンで情報を表現した。不可視性は、このパタンが空間に投影された段階と、これが撮像されて被写体像と重畳された形で画像となった段階の両方について上記実験システムを用いて評価した。実験結果から不可視性と可読性が両立する条件が存在することを明らかにした。3)ロバストな情報生成法の明確化:本研究ではRGBの3つの色成分からなる光源を用い、1つの色成分に高周波パタンからなる情報を埋め込み、残りの1つの色成分に歪みを補正するための参照用情報を埋め込んでこの情報に基づいて歪みを補正して情報を正しく抽出する方法を提案した。実験により提案方法を評価した結果、人の顔のような凹凸のある被写体に情報を含む光を投影した場合でも、ほぼ100%の正確さで情報を抽出できることを明らかにして本方法の有効性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光に埋め込む不可視情報を人間の目の知覚限界以下の微細パタンで表現する方法を検討した結果、当初の予想通り、情報の不可視性と可読性が満足され、この結果初年度の研究はほぼ計画通りの進捗であった。
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今後の研究の推進方策 |
初年度において本技術の実現性を示すことができたので、今後は本技術が広範囲に展開可能な汎用性をもつことを実証するとともに、技術の汎用化に必要な基礎データを取得する。技術の汎用性を示すため下記応用を取り上げてその実現性を実験により確認する。1)実物体の肖像権、著作権保護:初年度に求めた不可視性、可読性の条件とロバストな情報生成法を立体形状を含む様々な被写体に適用して本技術が効果的に機能することを確認する。さらに、これらの応用を実行するためのシステム構成を明らかにする。2)3次元画像再構成:本応用では空間の奥行きや傾斜により投影したパタンの特性が変化するような不可視パタンを照射し、撮像画像からこのパタン特性を読み取って被写体の奥行きを推定する。このようなパタンの候補として、パタンの投影系と撮像系が奥行方向にオフセットがある場合、撮像画像においてはパタンの空間周波数が奥行き位置で異なる点に着目して、これより奥行きを推定する方法を検討する。 一方、技術の汎用化に必要な基礎データの取得については、次年度は情報の不可視性を満たす光学特性に関する詳細データを取得する予定である。なお、このデータ取得用に初年度に色彩輝度計を購入し、測定の準備を進める予定であったが、購入予定の機器が入手できず、次年度改めてスペックを選定したうえで購入する。研究費の繰り越しはこのためであるが、測定自体は次年度実施の予定であったので全体の進捗には大きな影響はない見込みである。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記計画を推進するため、次年度は光学特性を評価できる輝度計(250,000円)を購入する。また、今年度構築した実験システムにより本技術の各応用の実現性を主観評価により評価するので、評価に必要な少額部品、消耗品の購入に250,000円使用する。また、主観評価の補助作業を行うアルバイトや、成果の論文発表のための英文校閲等の人件費、謝金に100,000円、論文発表のための旅費、学会参加費に300,000円を使用する予定である。
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