研究課題/領域番号 |
23650061
|
研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
松延 拓生 和歌山大学, システム工学部, 助教 (70322211)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 眼球運動 / 人間工学 / ユーザインタフェース / 解析・評価 / 情報構造 / コンテンツ領域 / コンテンツ対応 |
研究概要 |
本研究の目的は、現在画面単位での分析となっている視線の分析を、コンテンツ領域単位で視対象の情報構造に対応した分析を可能にすることである。平成23年度の具体的な目標として(1)ウェブ技術を利用し視線位置のコンテンツをHTML およびCSS を解析することで領域単位で特定する技術の開発、(2)画面の遷移状態を特定する技術の開発があった。 研究実施計画に基づき、現有機器である簡易非接触アイカメラ(ナック製EMR-NL8B)を用いて基本的なHTML解析方法を検討した。まず分析ツールの開発を行った。開発したツールは、当初計画通りウェブブラウザの機能を含み、インターネットエクスプローラ(以下IE)のコンポーネントを利用した実装を行った。IEコンポーネント利用によりIEと同等の表示が可能となったため、Flashなどのプラグイン対応も可能とした。内蔵ブラウザから視線座標位置のHTML情報を取得することで、具体的目標(1)のためのHTML要素、CSSに対応したclass,id属性を解析すると共に、(2)のための遷移状態を特定する画面遷移のログ取得を可能とした。 現状の成果の意義としてウェブコンテンツの領域とはHTMLで定義される文書構造とCSSで定義されるレイアウトによるため、文書構造とレイアウトを特定するための情報取得が可能となったことにある。これによりレイアウト上の意味づけを把握可能となった。実際に簡易非接触アイカメラを用いてタグレベルの利用方法を構造の異なるウェブサイトを対象に検討を行った。その結果多様な評価を行うには、目的に応じてタグのレベルを相対的に設定を可能とする必要があることが分かった。以上の成果を元にしてウェブのユーザビリティ評価に適している非接触アイカメラ(Tobii製X120)用に同様のツールを開発した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請時の研究の目的に対し、実施計画に基づいて実施しており順調に進展していると考える。また作成したツールを用いた実験により、平成24年度の計画の一部である分析方法の可視化方法についての検討を行うこともできており当初の計画以上の進展となった。 理由として第一に具体的目標(1)で挙げていた視線位置のコンテンツを領域単位で特定する技術を用いたツールを実装が完了したことが挙げられる。当初目的では領域単位としておりHTMLにおけるブロック要素の特定を前提としていたが、インライン要素についても特定が可能となっている。これは次年度予定している具体的目標(3)領域単位の視線情報を用いた分析結果の可視化方法の検討において詳細な分析を行うことが期待できるものとなっている。またCSSについてはHTMLにおける属性値の取得が開発したツールで取得可能となっている。これによりid属性およびclass属性を用いた領域単位の分析方法が可能となった。 第二に具体的目標(2)で挙げていた画面の遷移状態を特定する技術の実装が完了したことが挙げられる。ウェブページの遷移状況をツールに内蔵したブラウザ操作を元にアクセスログとしてURL、アクセス時間、アクセス方法を保存することを可能としている。この時ログの記録対象として平成24年度の目標であるユーザビリティ評価への効果検証で有用と思われるマウスの操作データについても合わせて記録可能なように実装を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は具体的目標の内(3)領域単位の視線情報を用いた分析結果の可視化、(4)開発技術のユーザビリティ評価への利用を行いた効果の検証を行う。 目標(3)の可視化方法を検討するために、実際のサイトを対象に評価テストを行い解析支援ツールの開発を行う。対象サイトは複数のページで構成され、CSS を用いてレイアウトを行っているサイトを選定する。平成23年度の実験によりHTMLのDIV構造が大きな影響を占めていることがわかったため、それを元に対象サイトを選定する。CSS は複数ページから共通CSS ファイルを参照しているサイトとする。実験では被験者の閲覧情報を記録すると共に、アイマークを含んだ画面(視野カメラ映像)をビデオ記録する。タスク終了後に被験者が何を考えながら閲覧していたかを確認するため、記録したビデオで視線の動きを見ながら解説を行ってもらう形でインタビューを行う。複数ページを持つウェブでのコンテンツ領域を反映した分析結果の可視化方法を検討の上、解析支援ツールの出力機能に反映する。 目標(4)のユーザビリティ評価への効果を検証するため、解析支援ツールを用いた実験を行い本提案手法の効果検証を行う。支援ツールを用いて、コンテンツ領域毎のページ遷移、停留点軌跡、停留軌跡比較図、視線停留時間を求め従来手法との比較を行う。ウェブのユーザビリティについては、例えばナビゲーションに最も影響を与えるトップページでは、タスク達成のための方略が立てやすいかなどを評価する。ウェブではさまざまな注視対象の捉え方(サイト、ページ、タイトル、メニュー、段落、文章、単語、文字、画像など)があるが、自動化できる検討方法について考察する。得られた結果から、領域特定の方法を再検討し評価ツール及び解析支援ツールの修正を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
ユーザビリティ評価実験には非接触アイカメラを用いる。これはユーザビリティ評価を行うには、簡易非接触アイカメラは顎台での固定が必要なためである。従来手法による分析との比較を行うが、この分析には膨大な時間がかかるため研究補助者による分析作業を並行して行うために分析用ソフトウェアの追加購入を計画している。また、動画の記録用にハードディスおよびメモリカードといった記録メディアの購入を計画している。 国内学会(ヒューマンインタフェース学会を予定)および研究会(人間工学会)へ、研究資料収集および成果発表のための旅費を計上している。また、成果発表のための論文投稿費用および校閲費用を計上している。 開発されたソフトウェアの検証のため、データ整理を補助する研究補助者への謝金を計上している。アイマークデータを従来方法でコンテンツと対応づけるためには1コマづつ確認の必要があり、膨大な作業となるためデータの整理のための謝金は必須である。開発したシステムの評価、ユーザビリティ評価実験用に被験者謝金、計測実験を補助する実験補助者への謝金を計上している。
|