本研究の目的は、脳情報のみにより屋外での写真の記録を可能とする「ブレインライフログシステムの開発」を行うことであり、従来にない新しいライフログシステムの実現に向け、まず被験者に聴覚刺激を提示するシステムを開発した。屋内での着座、さらに屋外(富山県立大学キャンパス内もしくはその周辺)での直立、歩行、走行時の運動状態で聴覚刺激時の脳波を計測した。脳波計測は小型の脳波計をあらたに調達して実現し、頭頂部と耳朶に電極を装着した。結果的に、運動強度と脳波の波形の劣化には明瞭な相関があることが判明したが、屋外における歩行状態においても比較的明瞭な事象関連電位が出現することが分かった。 さらに、屋外の実験で得られた歩行等の脳波を用いた機械学習手法により、ヒトの状態推定を行った。ヒトの状態推定は可能な限り短時間の脳波で行われる必要があり、アルゴリズムの開発においては、高度なパターン認識技術を適用する必要があった。主に、多変量解析による特徴抽出、判別分析を利用した識別を行った。これに基づき、複数回加算時に高い精度を持つ、ユーザへのフィードバックを伴うオライン駆動のブレインライフログが実現できることを屋外歩行実験により実証し、目的を達成した。より理想的なシステムとするため、屋外の写真を自動で記録するシステムの開発に着手した。コンピュータビジョンの機能をソフトウェア開発により実装し、ノートPCにおいて駆動することを確認した。一方、問題点としては、このコンピュータビジョンのソフトウェアと脳波推定システムは個別2台のノートPCで実現しており、研究期間内では連携するには至らなかった。今後はこの連携を可能とし、システムの完成を目指したいと考えている。
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