研究課題/領域番号 |
23650065
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小山 博史 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30194640)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 熟達化 / 学習 / 技能 / スキル / 人工現実感 |
研究概要 |
本研究は、脳神経外科手術における病変部の特定の学習に焦点をあて、脳神経外科手術における熟達化の特徴を分析しつつ、熟達化を促進する因子の特定を目指している。実際の脳神経外科手術は高度な専門知識要し、且つ極めて複雑な手技である。このため、実際の手術室内で術者の手術手技や生体データの計測は困難である。本研究では人工現実感技術を用い標準手術体験空間と臓器モデルを独自に開発し、標準空間内の標準モデルに対する仮想体験中の因子を熟練者と初心者との間の因子の違いを明らかにすることで適応熟達化を促進する因子を抽出することを目指している。当該年度の研究実績は以下の通りである。1.熟達度評価用の標準的仮想手術体験実験環境の独自開発。顔面痙攣の治療の1つである神経血管減圧術という脳神経外科の開頭手術に関する専門手技の熟達度を促進する因子を明らかにするために実際の匿名化されたデータを参考にコンピュータグラフィックス専用ソフトウエアを用いて顔面神経、小脳・脳幹、脳血管(主に圧迫血管)、側頭骨、皮膚の領域抽出を行い、できるだけ実際の症例に近い形状モデルと手術空間を作成した。これらの臓器モデルを擬似顕微鏡デバイス装置(ハンドヘルド型ディスプレイ)で仮想臓器を立体視しながら、触覚提示装置を用いて触った感覚が体験できるシミュレーション空間を開発した。これにより、あたかも顕微鏡下に仮想臓器や神経を観察しながら、触覚デバイスで臓器を触知し、基本操作の訓練,反復練習をモニタリングするための標準的仮想手術体験実験環境を構築した。2.適切な評価基準の獲得の評価:技能訓練によるスキル向上の評価に必要なパラメータの大脳生理学的な観点を含めた抽出を目的として仮想環境体験中における脳波測定の可能性を検証した。その結果、ノイズがやや高くなるものの測定可能範囲であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.熟達度評価に必要な実験環境:熟達度を評価するための立体視や触覚、手術室内の音響を体験できる仮想空間とそのモデルを実際の症例をもとに三種類の頃なる病変のパターンを体験できる空間と臓器モデルの独自開発を行った。血管や神経の変形や出血などの実際の術野でおこる事象に関するシミュレーションについては次年度以降検討を行う。2.下位技能の習熟の評価:この実験環境で体験可能な技能の分類・構造について3人の専門家が記載した手術書の文章についてテキストマイニング手法を用いた手法の妥当性について検討した。3.適切な問題解決のための知識の獲得の評価:専門家が記載した手術書を基に技能対象となる手技の問題を抽出し、その解決法に関する知識を基に仮想環境の中のアプリケーションに反映させるべき要件を抽出した。4.適切な評価基準の獲得の評価:技能訓練によるスキル向上の評価に必要なパラメータの大脳生理学的な観点を含めた抽出を目的として仮想環境を体験中の2例の脳波測定を行った。各種デバイスによるノイズがあるものの測定可能範囲であることが示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
1.熟達度評価に必要な模擬技能実験環境の改良:技能検証用手術体験標準モデルを5例程度作成し、特定の技能を構成している技能の構造について体系化する。技能に対しての模擬技能の役割を明らかにする。その役割に対する模擬技能訓練装置を構成しているデバイス毎の性能と機能項目とその性能を対応付ける。それを基に、技能の熟達者と研修医に対して模擬技能訓練装置を利用したのちに模擬の役割が達せられたかどうかの調査を行い、模擬技能訓練装置の性能機能の改善点を明確化する。この評価法を基に、模擬技能訓練装置の訓練装置としての妥当性に関する評価法を作成する。2.下位技能の習熟の評価:初年度にテキストマイニング手法により分類・構造化した技能の中の要素を基に状況に応じた下位技能の習熟の有無が確認できるアプリケーションへ拡張を行う.これを基に熟練者と初心者を対象とした評価実験を繰り返し、下位技能の獲得要因の抽出を試みる.3.適切な問題解決のための知識獲得の評価:初年度の問題からさらに複雑な問題を模擬技能訓練装置上に作成と術者の反応時間の計測技術の改良等を行う。特に複雑な問題として脳幹,血管,脳神経,小脳,頭蓋骨といった主要な構造物の処理を課題として取り込む.匿名処理後のMRIあるいはCT画像から脳幹部のモデルを作成しvariationやanomalyの例を増やし,熟練者の経験や知識などに基づいて設定する.プログラムの改良を続けながら予備実験により技能計測の妥当性を検証した後,熟練者と未経験者との特性計測比較を行い,本研究で提案するスコアリングの有効性についての評価を行う.4.適切な評価基準の獲得の評価:技能訓練上必要となる評価基準の獲得について開発された実験環境を用いて、実際に操作しながら評価実験数を増加させる.これをもとに評価基準のさらに詳細な抽出を試みる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
1.物品費:本研究費での備品の購入計画はなく計上していない。消耗品については生体信号計測用の消耗品費として10万円計上している。2.旅費:本研究成果を発表予定の国内の関連学会への出席するための旅費として14万円計上している。3.人件費・謝金:被験者及び論文の翻訳・校正料として10万円計上している。4.その他:本研究成果の発表・遂行に必要な印刷費・通信費・運搬費・会議費・機器の修復費等29万円計上している。
|