研究課題/領域番号 |
23650067
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
市川 保正 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (40134473)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 知能機械 / 認知科学 / セルオートマトン / 神経回路網 / ランダムウォーク / 知能構成論 |
研究概要 |
本研究は知能そのものではなく,知能に至る以前の「認識」の自律生成構造を明らかにすることを目的とし,認識生成モデルを構築し,実際に認識が形成されることを数値実験により検証する.構築するモデルでは,脳内修飾物質を模した物質濃度場とそれに覆われたニューロン群で構成し,外部刺激によって生ずる発火パターンの時間発展から得られる物質濃度場の発展法則を抽出する自律アルゴリズムを構成する.入力と濃度場の自律的な相互イタレーションの繰り返しは外部情報に対応した特定の濃度分布に収斂することが期待され,収斂した分布から分布を生成する生成子を抽出し,「認識」として記憶する. 本研究は上記目的を達成するために3年間(前期と後期の2期に分ける)の研究期間を設ける.23年度~24年度前半は,処理系として脳内神経修飾物質の場を模したアナログ場とCAニューロンモデルによって修飾物質濃度場と発火点群の相互作用の方法を検討してモデル化する.23年度の進展を列挙する.(1) 生成子モデルのプロトタイプとして独自のセルオートマトンモデル(CA)を導入し,生成子をCAのルールとして抽出するアルゴリズムを開発,MTALABおよびANSYSYによって数値実験を行った(進行中).これによってルール抽出法の確立を行う.(2) 濃度場と相互作用する生成子モデルを構築する. 発火確率を司る物質濃度場はCA上に設定した分泌物質のランダムウォークモデルを導入した.これによって結節点の空間的発火発展が模式的に得られると予想されているが現時点ではCAモデルとは独立に構築中である.(3) 情報収集としては,文献調査により,自律的あるいは恣意的に目標値を変える制御系に至る研究は見いだされず,本研究の独自性を確認した.一方,神経モデルに関しては,国際会議MEMS2012 において神経網を模した配線の構築法に関する知見を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデルの構築に関しては素子化したセルオートマトンに関する十分な検討を行いルール抽出が可能な条件を得た.また,アナログ場モデルは,ニューロンの発火によるシナプス伸張をランダムウォークでモデル化する着想に至り,神経回路網のパターンが特定のパターンに至るアルゴリズムへ一歩前進した.これまでの進捗は大旨予定通りであり,順調と言える.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,2期に分けており,基礎モデルの構築は24年度前半までに行う予定であった.現在進行中の独立モデルの構築をすすめ,24年度中に拡散物質場と離散的発火場のカップリングを行い,シミュレーション実験を行って,生成子が実際に生成されるところまでモデルの検討修正を行う.25年度は,回路をデジタル-アナログ回路生成LSI(P-SOC)とシミュレータをカップリングすることによって,実際に認識概念を持つ知能機械の構築を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
計算用の高速パソコンを購入し,MATLAB,及び有限要素法ツールによるシミュレータを構築する.計画で挙げていたANSYSは最近の市販ソフトの発達によってより簡便にシミュレータが構築できる有限要素法ツールCOMSOLにライセンスを変更し,シミュレータの開発期間を短縮する.また,実機への実装を想定しているので多点センサに関する知見を得るために国際会議MEMS2013への参加を予定している.また,研究の進展状況によって,国際会議での発表かジャーナルへの投稿を行う.
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