研究課題/領域番号 |
23650067
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
市川 保正 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (40134473)
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キーワード | Artificial Intelligence / Cognition / Cell Automaton / Nyurotransmitter |
研究概要 |
本研究では,脳内修飾物質の影響をニューロンの発火確率を制御する物質の濃度場としてモデル化する.以下の機能を基本構成として持つ.①空間的に結節したニューロン群を神経修飾物質の濃度拡散場が覆っている.②各結節点の発火非発火の閾値は,アナログ場の物質濃度によって決まる.③神経修飾物質はニューロンの発火時に場に放出され濃度分布を時間発展させる.④発火時間と各物質の緩和時間に差を設けることにより,次の発火時に前の発火の影響が場の状態として残る.この濃度分布発展ルール(生成子)は内部的に構成可能な外部情報(認識場)として捉えることができるので,記憶した生成子をもって「認識」と見なす. 平成25年度までに,生成子モデルとして多入力多出力セルオートマトンを基本構造して,セル上に設定した分泌物質濃度場(ランダムウォークモデル)による発火確率の変化と発火・非発火による促進物質と抑制物質の放出による濃度場の変化の相互作用によって,時間発展する系のモデル構築した.現時点では発火場としての3入力3出力セルオートマトン素子の構成及び,ランダムウオークモデルのセルグループに発火に対応する濃度インパクトを与えて分泌物質濃度を変更する部分の構成には成功している.また,認識の再現記憶(生成子)の構築に対して刺激と反応に対して人の反射ループを模した,独立して刺激入力を処理するセルオートマトン素子の着想を得て,素子の複合と中央処理の相互依存型ニューラルネットワークのモデル化を行っている.さらに,認識が自律的に発現するためには動機の自律発現が必要であることに気が付き,現在理論的検討を始めている. 現時点では,結果に至っていないので研究を一年延長し,どのような刺激に対しても何らかの収束ループが生ずる手法の検討を行い,生成子の抽出(認識の形成)につなげたい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成25年度は,最終年度であったので,濃度場をニューロンの発火非発火によって分泌物質が放出されるモデルを導入した.これによって,濃度場と発火時系列との間に相互作用が生じ,発火時系列の収束プロセスが,CAへの入力初期値に依存して変化することが期待された.しかし,現時点では,前年度までに構築した個々のモデルのカップリングを行っているが,収束性に問題があり,CAルールと濃度場の作用による収束プロセスの抽出(初期パターンに対する認識)には至っていない. 25年度の主な達成点としては,人の体が多くの反射運動の組み合わせで刺激に対して反射的に反応していることから反射ループをセルオートマトン上に組み込むという着想に至った点である.具体的には刺激をカテゴライズすることによって,各カテゴリに属する刺激群に対応して特定出力をするループを挿入することによって,複数の反射ループの複合体として一つの認識の形成に至るのではないかという予想が,本着想の骨子である. また,知能形成には動機の自律形成が必要であるという点に気が付き,それをモデル化するというテーマにも着手した. 26年度は,発火場と濃度場のカップリングと新しい着想を実際にモデル化して実装することを中心にして研究を進める.
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今後の研究の推進方策 |
現在,個々に成功しているセルオートマトン素子と分泌物質場をカップリングするときに複数のセルオートマトン素子の結合方法が多数あり,濃度場との相互作用をいれた計算モデルから,初期入力パターンに依存したルールの抽出法を試行錯誤中である. これを解決するために,特定の入力パターンに対応して動作する一つあるいは複数のセルオートマトン素子による反射ループを構築する.これらの反射ループは入力刺激によっても中央処理系からの指示によっても反応するように作る.このために,中央処理装置と各素子が独立している必要があり,これをノードとして計算できる計算環境を整える. また,分泌物質濃度場は拡散場であるので,いくつかの分泌物質放出点回りの濃度計算とセルオートマトンループへのフィードバックを実時間内で行うためと研究時間の節約のために,市販の拡散計算シミュレータを導入する. 結果をまとめて,国際会議またはジャーナルで発表する.
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次年度の研究費の使用計画 |
初期の予定に対して,ニューラルネットワーク場と分泌物質濃度場モデルとのカップリングの整合性が取れていないので,これを行うためにはさらなる研究期間の延長が必要である. また,さらに,知能化という視点での新しい進展として,刺激を局所的に処理する反射ループの複合による知能という着想および知能の自律発現には動機の自律発現が必要であるという着想が導入され,それぞれの理論的な検討と現在までのCAモデルへのこれらのモデルの導入という研究課題に発展しており,この研究には時間が必要である. 本年度は最終年度なので次の計画に従って予算した (1)計算モデルの構築と整合性の理論的な検討を実時間内に行うために市販のシミュレーターを購入し,アナログ場の高精度計算を行い,相互作用をリアルタイム処理する.(2)計算環境として離散発火場(複数ノード)と濃度場をそれぞれ一つのノードとして受け持つ複数ノードを持つ高速コンピュータもしくは,LAN等でリンクしてノード計算を行う複数のパソコンを購入する.(3)先端研究情報の収集と国際会議での発表あるいは国際ジャーナルでの発表に必要な費用 (4)簡単な検証用実機購入(製作)費用
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