研究課題/領域番号 |
23650070
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
小川 泰右 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 特任助教 (60586600)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 知識獲得 / 価値観 / オントロジー / サービスモデリング / 患者中心医療 |
研究概要 |
本研究の目的は,医療サービスが患者の生活内に生み出す価値を顕在化させ,体系的な知識として蓄える方法を確立させることにある.この目的を,医療者と患者がサービス内容について対話する際に,お互いの価値観を表明することを情報システムにより支えることで実現する.支援は,医療サービスのモデリングにおいて,医療者がサービス設計で暗黙的に患者や,彼らが生活内でかかえる問題をどのように想定しているのかを,医療者に内省を促すことで顕在化するというアプローチをとる.この内省を,医療サービスの設計だけでなく,医療者と患者が医療サービスを選択する際の対話でもおこなうことで,患者の価値観への設計にも応用するものである.これまでの研究において,サービスを目的指向で設計させ,複数の設計解について目的に合意したうえで,なぜ手段に差異があるのかを説明させること,この説明から逆にサービスの設計において暗黙的に前提となっていた諸問題(そこには,当初予定していた患者像の想定だけでなく,経営や労務など病院がかかえる諸問題)を聞き出すという手法がえられた.手法は,サービスモデリングツールとして基本的な設計までが完了しており,手作業による手法の適用から,おおよそ期待した効果が得られることが確認された.次年度以降にツールを用いた試行を積み上げることで,医療者が想定する「患者の生活内価値」が表出できるか,ツールを患者と医療者の対話に応用することで,患者自身の「患者の生活内価値」の表出できるかを検証する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
医療サービスが患者の生活内にもたらす価値を明らかにし,知識として体系的に蓄える方法を得ることが本研究の目的である.この方法の概要は,医療サービスをモデリングする際に,医療者が暗黙的に前提としている患者像や患者生活を聞き出すこと,医療者が医療サービスを患者に説明する際に,患者生活にもたらす影響を患者自身がどのように考えるかを聞き出すというものである.研究はおおよそ3つのフェーズ,1.方法の設計,2,医療者による試行,3.医療者と患者による試行で構成される.現在,1.がおおよそ完了しており,ツールとしての設計と実装の準備を終えている.方法の手作業による効用の確認も済ませている.次年度は,ツールを医療者に利用させることで,手法の効用を2.のレベルで検証する.最終年度は,3.のレベルで検証する.
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度において,医療者の価値観を顕在化する基本的な方法を策定した.この方法を支えるツールの基本設計までが完了している.次年度は,このツールの実装を早期に済ませ,ツールの利用を通じて実証的に方法の有効性を検証する.具体的には,診療科の違いからくる患者像・患者価値の想定について,看護師を中心に医療サービスモデリングとその背後にある患者価値の顕在化を試みる.この試用実験は,宮崎大学病院の第1第2内科を予定しており,その後他診療科への横展開,病院全体で行われる医療サービス改善のための会議での利用に展開させる.最終年度は,ツールを医療者と患者の対話で利用する.これにより当初の目標であった,患者の生活内価値を患者からも聞き出せるかを検証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度の成果である医療サービスモデリング手法について,論文執筆を進めており,発表が平成24年度となったため,未使用額が生じた.平成24年度の研究の中心的な作業は,ツールの実装と,それを用いた方法の有効性検証である.ツールは研究協力者である宮崎大学病院で試運用する.これに際して,看護師を中心とした医療専門職がテストユーザとなり,彼らへの謝金の支払いを予定している.また宮崎大学への出張費を想定している.結果を暫時,国内・国際会議(AI・情報処理系の学会と,KnowledgeManagement系の学会を想定している)に公表するための費用に充てる.
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