本研究は,テキスト編集時に,テキストの状態や構造を踏まえた視覚的な表現を効果的に持ち込むことにより,書き手の認知プロセスに寄り添うテキスト編集環境の構築を目指すものであった. 研究初年度に構築したDynagraphは,入力中の文章に対して動的なテキスト解析を高速に行う解釈エンジンをバックグラウンドで走らせ,名詞,動詞および形容詞からなる各内容語が,書かれつつある文章のどの部分にあるかを示すインデックスを作成することで,入力中の文章に洗われる単語の出現頻度や出現箇所をビジュアルに表現するツールを実現したものである. 研究第二年度は,文章を編集するウィンドウ内でテキストを入力していく際に,指定した単語やフレーズ部分に対して,複数の案をブランチ(枝)として生成していけるようなテキスト編集ツールMarkleftを構築した.リール方式のインタラクティビティのメタフォを利用し,代替案(alternatives)を選択した単語やフレーズに対するインラインのコラムとして表示し,代替案の変更や選択をキーストロークで行えるようにした. 研究最終年度に構築したMarkleft2では,現状テキスト,代替案リスト,予測テキストという三つのカラムを擁することで,語彙やフレーズの選択の揺れを代替案として列挙しながら,書きつつあるテキストの現状とそれに対して代替案を適用した場合のwhat-if状態の双方を見比べながら文章を書く,という行為を支援することを実現した. これらのツールの構築を通して,ビジュアルな表現を介して,書きつつあるテキストが現状ではどのような状態・状況にあるのかということを,書き手に対して視覚的にフィードバックし,その視覚的表現を書きつつあるテキストのrepresentational talkback (表現からの語りかけ) を増幅するものとして作用させる機構を構築することができた.
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