研究課題/領域番号 |
23650078
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岡谷 貴之 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (00312637)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 植物蛍光計測 / 光合成反応計測 / クロロフィル蛍光 / プロジェクタカメラシステム |
研究概要 |
まず,入射光に対するクロロフィル蛍光および葉の表面下散乱光のモデリングを行った.葉表面への入射光に対するクロロフィル蛍光ならびに表面下散乱光を,物理ベースビジョンの立場でモデル化した. 次に,葉表面付近での反射光の成分分離法の検討とその蛍光・吸収計測への応用を検討した.Nayarらが提案し,Guptaらが発展させた方法を応用することで研究を進めた.基本原理は,プロジェクタから構造化されたパタン光を対象物に何種類か投影し,その際の反射光の輝度差から,反射光を直接反射成分とそれ以外に分離するというものである.文献では,ある植物の葉表面での反射光の分離結果が例示されており,実システムを組み,実験を重ねた.実験結果を踏まえ,現在,このように反射光を成分分離することでクロロフィル蛍光・吸収計測を高精度化する方法を,(1)で構築するモデルに基づいて実現すべく,研究を継続中である. 当初計画では,マルチスペクトル・プロジェクタカメラシステムの構築を当該年度に行う予定であったが,上記モデリングおよび基本実験に予想よりも時間がかかったため,行うことができなかった.プロジェクタとカメラを連携させて,対象となる植物の葉表面での照射光の照度を正確に制御する方法を実現すべく,対象となる植物の3次元形状を計測し,葉表面の照度を予測する方法を考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要にて述べたとおり,入射光に対するクロロフィル蛍光および葉の表面下散乱のモデリングを行い,さらに反射光の成分分離方法の検討を行った.そのための実システムを組み立て,実験を行うところまではできたものの,その後予定していた,マルチスペクトル・プロジェクタカメラシステムの構築を行うことができず,翌年度に持越しとなった.理由は,上記モデリングおよび基本実験に予想よりも時間がかかったため,行うことができなかったことによる.
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今後の研究の推進方策 |
まず,前年度から持越しとなっているマルチスペクトル・プロジェクタカメラシステムの構築を行う.具体的には,照射光の制御および反射光の計測の両方をマルチスペクトルにて行える装置を構築する.諸条件を考慮して,既製の映像プロジェクタを流用する.既製のプロジェクタで実現できるのはRGB三原色の加算光のみであり,投影光の波長制御の自由度は低い.そこで,光源を意図的に変えたLCD方式のプロジェクタを複数台使い,対象物上で投影光を重ねる方法を採用する.各プロジェクタの光源のスペクトル分布をうまく選ぶことで,最終的に合成される光のスペクトルの自由度を増やせる.カメラについては,RGBカメラと複数照明を用いてシーンの反射スペクトルを得る方法を利用する. 次に,光合成励起光と蛍光測定光の空間分離法の研究を行う.前年度の「(1)蛍光および表面下散乱光のモデリング」および「(2)反射光の成分分離法」の結果に基づき,葉表面への構造化パタン光投影により,クロロフィル蛍光を観察するための測定光と光合成の状態を変化させる励起光を分離する方法を実現する.基本原理は,反射光の成分分離同様,パタンの明領域と暗領域での画像輝度の振る舞いを利用する.分離精度を最大化する最適パタンの設計とその時系列処理の方法を実現する.
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次年度の研究費の使用計画 |
マルチスペクトル・プロジェクタカメラシステムを構築するため,プロジェクタとカメラの購入を予定している.また,引き続き,実験試料として計測対象となる植物サンプルを購入する.
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