研究課題/領域番号 |
23650078
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岡谷 貴之 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (00312637)
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キーワード | クロロフィル蛍光 / 構造化光投影 / プロジェクタカメラ |
研究概要 |
初年度に構築したプロジェクタを用いた計測システムを使って,葉表面付近での反射光の成分分離法の検討を行った.まず,Nayarらが提案し,Guptaらが発展させた方法にもとづき,プロジェクタからパタン光を動的に制御しながら葉の表面に投影し,それをカメラで撮影した画像を用いて,葉表面付近からの反射光を,表面で反射しそのままカメラに届く直接光と,葉の内部に入り込み葉表面から飛び出した後カメラに届く間接光の2つの成分に分離する実験を行った.当初計画していたマルチスペクトル・プロジェクタカメラシステムを構築するよりも,プロジェクタおよびカメラそれぞれに照射光と反射光の余分な光をカットするためのバンドパスフィルターを取り付ける方が精度の面で有利ではないかとの着想を得て,これを実行した.フィルタの選定や,照射光の強度および角度,照射パタンの詳細など,いくつもの選択肢やパラメータがあり,これらを一つずつ試しながら実験を行い,このシステムを蛍光・吸収計測へ応用できる目処をつけることができた.この方法は,当初計画していた光合成励起光と蛍光測定光の分離を行うことなしに,植物蛍光計測が高精度に行える可能性を示すものである.結果として,従来から知られている均一な照明とカメラの組み合わせで植物蛍光を計測する方法に対し,構造化パタン光の照射制御を行うことで,蛍光計測の精度を大きく向上できる可能性が現実に近くなった.研究成果の一部,具体的にはプロジェクタとカメラを用いた高精度3次元形状推定の方法は国際会議CVPRにて発表し,それ以外の成果は公表へ向けて現在準備中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的は,プロジェクタからパタン光を植物に照射して,(i)葉の表面付近での反射光を各成分に分離する方法,並びに(ii)光合成の励起光と蛍光・吸収の測定光等を分離する方法を実現し,クロロフィル蛍光計測を中心とする植物の光計測を高機能化することにあった.(i)により,クロロフィル蛍光計測を高精度化できることは,一定の目処をつけることができた.ただしその精緻な検証は今後行う必要がある.(ii)については,今後も検討を続ける.
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今後の研究の推進方策 |
24年度に行った研究の結果,プロジェクタからパタン光を投影してクロロフィル蛍光計測を高精度化することの可能性が現実に近いものとなった.最終年度となる25年度は,当初計画どおり,計測の検証実験を行う.当初計画にあったマルチスペクトル・プロジェクタカメラシステムによる計測の高精度化については,引き続き理論的検討を続ける.
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次年度の研究費の使用計画 |
多数の品種の植物や色々な環境での実験実施を計画している.そのために謝金等による人件費の支出を予定する.またこれまでの研究で得た成果の公表を行うため,旅費の支出も予定している.
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