研究課題/領域番号 |
23650084
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡辺 義浩 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (80456160)
|
研究分担者 |
CASSINELLI ALVAR 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (60422408)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 知能ロボティクス / 超高速情報処理 / 画像、文章、音声等認識 / 計測工学 / 高性能レーザー |
研究概要 |
本研究計画では、リアルタイム3次元センシングによって変形・運動中の紙媒体の位置と変形を認識し、高速ビジュアルフィードバックによって対象状態に応じた印字パターンを生成し、高速印刷技術によって非接触で瞬時に印刷を行う技術"Book Flipping Printing"(BFP)の実現を目的としている。この構想の下、ビジュアルフィードバックのための高速3次元センシングの開発、高精度印刷のための超高速画像補正、新機構による高速印字技術の3つの要素技術の開発を行うとともに、これらのシステム統合によって提案技術の実現を図る。本年度は、特に本技術を実現するために、高速カメラと高速レーザの2つから構成される印刷システムの実験プロトタイプを試作した。また、本システムを用いて、印字対象の3次元位置と姿勢を高速に取得する手法を新たに開発した。今回は、印字対象の紙が一般環境下に静止した状態で置かれていることを前提として、ユーザの簡単な指定によって自動的に検出し、その位置・姿勢を高速に3次元認識する手法を設計した。また、光照射を行うためのカメラ・レーザ間の動的観測・投影制御の枠組みを構築した。カメラ上での観測位置と同位置へ投影するためのレーザの制御パラメータの両者の関係を幾何学的に立式するとともに、システム動作のために事前に必要な設計パラメータを簡便に取得する手法を設計した。これらの提案技術を用いて、対象物体を検出して、所望の印字パターンを投影する実験を実施した。この結果、当初の目標通り、静止している平面物体に対して、パターンの投影を瞬時に行えることを実証した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、プロトタイプシステムの試作と、その動作に向けて必要となる要素技術の開発、および高速カメラを用いた印刷対象の自動3次元認識からパターンの瞬時投影までの一連の動作実験を行い、提案技術が構想通りに実現可能であることを確認した。このように、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。一方で、実験の結果、レーザの投影システムが当初予定していたよりも、より高速な仕様であっても、システムとして動作可能であることが分かった。これによって、本研究が目指す非接触印刷技術の瞬時性を大幅に高めることが期待できると考えられる。この実現に向けて、新システムの構築を予定しており、今後は計画以上の進展が望めると期待される。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度までに、高速カメラと高速レーザからなる非接触瞬時印刷のための第1次プロトタイプシステムを構築し、その動作のための要素技術の着手と、印刷対象の3次元認識からパターンの瞬時投影までの一連の動作を確認した。これらの研究を遂行した結果、レーザによる光照射を用いた構成で、本研究の構想を具現化できる可能性があると判断した。加えて、より高速なレーザシステムを用いることで、その瞬時印刷の技術レベルを高めることができることを見積もった。今後は、これらの成果に基づいて、新システムの開発に着手する。本システムの開発によって、センシングとプロジェクションの高速化を達成した後に、運動中の物体に印字を行うために必要となるダイナミクス補償に向けた要素技術の開発に着手する。さらに、変形物体への印字を行うための3次元センシング技術の導入を図る。その後は、技術の更なる高速化を図るために、パターン投影部のマルチヘッド化の構想を検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、非接触印刷技術の更なる高速化を図るための新システムを、本年度に行った設計をもとに開発する。このためには、カメラ、レーザの両デバイスとともに、特殊なガルバノミラー、及び光学素子が必要となるため、これらの調達に研究費を使用する予定である。あわせて、高速な制御を行うための計算機が必要となる。また、システムのマルチヘッド化に向けて、システムの拡張に研究費を計上する予定である。さらに、以上の研究遂行によって実現される非接触瞬時印刷技術を積極的に対外発表する予定であり、このための経費を研究費として使用する。
|