超高齢社会の到来に伴い,生活の質を維持するためのサービスロボットへの期待が高まっている.ロボットがさまざまな作業を行うための知識をすべて与えておくことは困難なので,現場での教示が不可欠である.本研究では,日常作業を行う際の動作を簡便かつ直観的に教示できる無拘束ポータブルインタフェースの実現を目的としている.今年度は以下の研究を行った. 1.手の動きと開閉状態を信頼性高く推定する手法を開発した.指部のエッジ特徴と肌色特徴を併用して手候補領域を抽出し,画像と慣性センサからの情報を拡張カルマンフィルタで統合し手の位置を追跡するとともに,手領域の形状から手の開閉を識別する. 2.遠隔地でのロボット動作教示を想定し,ロボット頭部に設置したステレオカメラの映像を操作者のヘッドマウントディスプレイに表示してロボットの作業状態を把握できるシステムを構築した. 3.動作教示と自律動作を組み合わせて,操作者の意図を伝えつつロボット動作の高速化・安全性向上を図る方法を研究した.教示と自律動作の融合には,作業実行中に,作業がどこまで進み,どのような自律動作が必要かをロボットが判断できる必要がある.そこで,作業を,対象物の位置,ロボットと作業台の位置関係,あるいは手の開閉状態などを状態とする有限状態機械としてモデル化し,作業の進行状況を逐次推定しながら適切な自律動作を実行する枠組みを構築し,実験によってその有効性を示した. 4.前項の作業モデルを人とロボットの共同作業へ応用し,その有効性を検証した.複数の操作者(人あるいはロボット)が協力する必要のあるテーブルの組立作業を取り上げ,有限状態機械でモデル化した.そして,作業モデルを参照しながら,距離センサやカメラを用いて,人の動作の意図や作業の進行状況を推定するシステムを実装し,人とロボットによる共同作業を実現した.
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