研究課題/領域番号 |
23650097
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
奥乃 博 京都大学, 情報学研究科, 教授 (60318201)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 知能ロボティックス / カエルの合唱モデル / 音楽共演者ロボット / 音楽合奏協調 / テルミン演奏ロボット / ノンパラメトリックベイズ / 楽譜追跡 |
研究概要 |
本研究では,カエルの合唱機構の解明を通じた,創発的な音楽ロボットと人との合奏協調の実現を目指し,共演者ロボット要素技術と合奏協調機構の研究に取り組んだ.具体的な成果は以下の通り.(1)共演者ロボットの要素技術の開発:(1)電子楽器テルミン演奏ロボット:既開発のテルミン演奏システムを小型ヒューマノイドNAOに移植し,合奏用ロボットとして使用できるようにした.(2)自己生成音抑制の高機能化・処理の軽量化:自己の歌声・演奏音を既知音源として扱うICAによるセミブラインド分離処理の軽量化を図り,ロボット聴覚ソフトウエアHARKのモジュールとして実装.(3)リズム認識・楽譜追跡の高性能化:演奏揺らぎを確率モデルに取込み,non-parametric Bayesian 手法により,楽譜位置推定とビート予測のロバスト化を達成.(2)共演者ロボットの合奏協調機構の開発:(4)画像レベルでの同期:マイクロソフト社KINECTを使用し,深度センサーと画像処理とを統合した不要画像除去技術を開発し,ギター演奏の弾き腕・手の動きからのテンポ推定・楽譜追跡が性能向上.(5)リズム・メロディレベルでの同期:人の演奏に楽譜レベルで忠実に追従可能となり,デモを安定して提供できるようになった.(6)合奏でのリーダシップを所与のものとはせずに,演奏者間で自律的に定まるような枠組みを考案し,カエルの合唱で用いた非線形結合子によるリーダシップ推定を行い,合唱の適応性を向上させた.(7)カエルの合奏を屋久島・隠岐島で実地観測を行い,カエルホタルの点灯パターンを長時間収録し,現在解析を行っている.また,入力音の帯域制限が可能なカエルホタル第2版の試作を行った. 以上の成果を,国際会議と人工知能学会25周年合同シンポジウムでデモを行うとともに,国際会議に2件発表,ジャーナル論文が国際誌に3件,国内誌に1件掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)共演者ロボットの要素技術の開発(1)電子楽器テルミン演奏ロボット:既開発のテルミン演奏システムを小型ヒューマノイドNAOに移植し,ヒューマノイドロボットHRP-2に加えてNAOも合奏用ロボットに使用することができるようになった.この結果,米国サンフランシスコで開催されたロボット誕生50周年記念のIEEE/RSJ国際会議IROS-2011でデモや,人工知能学会創立25周年合同シンポジウムでもデモが可能となり,音楽ロボットの有用性を実証することができた.(2)自己生成音抑制の高機能化・処理の軽量化:自己の歌声・演奏音を既知音源として扱うICAによるセミブラインド分離処理の軽量化を図り,ロボット聴覚ソフトウエアHARKのモジュールとして実装.(3)リズム認識・楽譜追跡の高性能化:演奏揺らぎを確率モデルに取込み,non-parametric Bayesian 手法により,楽譜位置推定とビート予測のロバスト化を達成.国際会議発表,英文ジャーナル論文掲載.(2)共演者ロボットの合奏協調機構の開発(4)画像レベルでの同期:マイクロソフト社KINECTを使用し,深度センサーと画像処理とを統合した不要画像除去技術を開発し,ギター演奏の弾き腕・手の動きからのテンポ推定・楽譜追跡が性能向上.国際会議で発表.(5)リズム・メロディレベルでの同期:人の演奏に楽譜レベルで忠実に追従可能となり,デモを安定して提供できるようになった.(6)合奏でのリーダシップを所与のものとはせずに,演奏者間で自律的に定まるような枠組みを考案し,カエルの合唱で用いた非線形結合子によるリーダシップ推定を行い,合唱の適応性を向上させた.国際会議で採録.(7)カエルの合奏を屋久島・隠岐島で実地観測を行い,カエルホタルの点灯パターンを長時間収録し,現在解析を行っている.また,入力音の帯域制限が可能なカエルホタル第2版の試作を行った.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究成果を階層的な協調機構へ展開し,知的な演奏の実現を目指す.(1)共演者ロボットの要素技術の開発:(1)自己生成音抑制の高機能化・処理の軽量化,歌手ロボット・テルミン演奏ロボットの高機能化:低遅延実時間応答が可能な処理技法を開発し,多様な演奏形態にロバストなシステムを開発.(2)Non-parametric Bayeisianアプローチによる音楽情報処理技術の低遅延実時間応答技術の集大成:バッチ処理で培われた音楽情報処理技術と,incremental な実時間処理で培われたロボット聴覚技術とを,確率的アプローチ,特にグラフィカルモデルに注目し,両者の技術統合を幅広く行う.(2)共演者ロボットの合奏協調機構の開発:(3)画像・リズム・メロディレベルでの共演者・伴奏者としての誤り復帰を含む協調同期の実現.演奏中の任意の時点で人が主導権を持って同期が行えるように,同期シグナルとして演奏者の顔の動きや目配せを認識し,自分の演奏を変更する機能を開発.逆に,ロボットが主導権を持ち,人が楽譜の位置を迷った時に,同期がとれるような挙動を生成.(4)階層的な協調機構による高度インタラクションの設計:テンポ・音量・メロディーの揺らぎに対する双方の同期のモニタ機能を構築し,その上で各レベルの同期機構を一種の非線形振動子ととらえ,全体系の創発的安定化を狙う.さらに,従来のAI的手法によるモニタ機能と協調同期機構を構築し,結合型非線形振動子による同期と比較を行い,両者の優劣,さらにはより高次の協調機構の検討を行う.(5)3匹以上のカエルの合唱での位置情報の影響をフィールド観測で継続的に取り組み,得られた知見を3重奏以上の合奏協調に応用. 以上の成果を,国際会議に投稿し,ジャーナル論文を投稿する.
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次年度の研究費の使用計画 |
【物品費】300,000円 内訳は超音波マイクロフォン(4万円*4台),マルチチャネルAD装置(10万円),DVD等消耗品【旅費】 800,000円 内訳は国際会議発表(International Congress of Neuroethology, 8月米国,IEEE/RSJ IROS-2012,9月ポルトガル),隠岐島実地観測(5月),オーストラリア実地観測(3月)【人件費・謝金】 100,000円 内訳は音楽ロボット実験補助(50人時間*1000円),カエルホタル改造(50人時間*1000円)【その他】100,000円 内訳は国際会議投稿・ジャーナル論文投稿用英文添削(10万円)【合計】1,300,000円
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