研究課題
ヒトの場合,触った物体の温度と体温の違いから材質を感じたり,長く触っていると物体の局所的な温度が体温と近くなり,異物と感じなくなるなど,ホメオスタシス(生体恒常性)が知覚,特にハプティクスに大きく影響している.本研究では,把持物体の材質や形状識別を対象とし,このようなホメオスタシスをロボットに持たせることによって,ヒトと同等の知覚能力をもたらすことができるという仮説を提起し,実際に恒常性を持つロボットハンドを開発することによって,これを構成的に証明することを目的とする.(1)柔軟な皮膚を持ち,人間と類似した劣駆動構造を持つロボットハンドを開発し,滑りの学習についての実験を行った.ロボットハンドには,ひずみの振動を検知するPVDFフィルムと,ひずみゲージが皮膚内に埋め込まれており,ひずみ振動をニューラルネットワークを用いた連関学習に入力することにより,滑りを未然に防ぐような把握制御を実現した.(2)ヒータを備えたハンドシステムを開発し,ひずみセンサと温度センサによって,さまざまな材質からなる対象物を識別可能であることを,実験により示した.(3)センサの信号強度がノイズ強度に比較して小さいような,ノイズの大きい環境下においても,恒常的に安定なセンシングを実現するために,冗長なセンサ系を利用した,確率共鳴現象を基にしたひずみ測定の方法を提案した.実際に,シリコン皮膚下に複数のセンサを埋め込み,これらの信号間の確率共鳴現象を利用することによって,ノイズに比較して極めて小さい信号を取り出せることを,実験により確認した.
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Robotics and Autonomous Systems
巻: In press ページ: In press
10.1016/j.robot.2012.07.016