研究課題/領域番号 |
23650100
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
石井 千春 法政大学, 理工学部, 教授 (80296079)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 医療ミス防止 / 表面筋電位 / 脳波 / 特異動作検出 / 手術支援ロボット |
研究概要 |
初年度は、手術手技の中でも難易度の高い手術糸の結紮操作に対して自動動作識別を行い、結紮操作の中で縫合不全との関連性が高い糸結び動作に対して、術者の表面筋電位に基づいて自己組織化マップ(SOM)により特異操作判別を行い、特異操作時に術者に警告するシステムを構築した。具体的には、以下の手順で研究を実施した。[a] 基本鉗子操作の識別:結紮操作における手術手技を左右の腕の動作を組み合わせ、7種類の動作に分類し、鉗子に取り付けた力覚提示デバイスとひずみゲージにより鉗子操作量を計測し、閾値により両腕での動作の自動識別を行い、高い識別率が得られた。[b] 筋電位と脳波データの収集:糸結び動作の特異性を判別するために、通常操作とは異なる特異操作を、姿勢、握り、引張、突発、力み、の5種類として定義し、自己組織化マップを学習させるための特徴量データ(鉗子操作量および表面筋電位)を測定し、収集した。[c] 特異性抽出ベクトルの形成と特異性の解析:鉗子操作量による特徴ベクトルを入力とするSOM1と、表面筋電位に基づく特徴ベクトルを入力とするSOM2の2つのSOMを用いて階層的に特異操作を判別する手法を考案し、高い判別率が得られた。また、特異操作と判別された際に、モニター画面の色変更、チャイム音、力覚デバイスPHANTOM Omni による力覚制御により術者に警告するシステムを構築した。 研究は順調に進んでおり、一部次年度実施予定の計画にも進展しているが、脳波の利用に関しては交付額減額の可能性があり当初の交付決定額の7割までしか支出が認められなかったため、脳波計測の開発環境ソフトウェアの整備が遅れてしまい、研究があまり進んでいない。次年度は特異操作判別の特徴量に脳波を利用して、脳波の有用性を検証することが主な課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、糸結び動作が特異操作と判別された際に、特異操作の危険性の高低により、視覚・聴覚的及び力覚デバイスによる力覚により術者に警告するシステムを構築した点は、当初の計画以上に進展しているが、脳波の利用の面において当初の計画より研究が遅れているため、おおむね順調に実施していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
既に、鉗子操作量および表面筋電位に基づいて結紮操作に対する自動動作識別、及び糸結び動作に対する特異操作判別を行い、特異操作時に術者に警告するシステムを構築しているので、今後の推進方策としては、脳波を特異操作判別の特徴量に利用し、利用しない場合との判別率を比較して、脳波の有用性を検証することが挙げられる。さらに、構築した医療ミス防止安全支援システムの定量的な評価も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた背景は、脳波計測の開発環境ソフトウェアを他の予算から捻出したことによる。脳波の安定した計測が困難であったため、次年度に請求する予算と合わせて、電極を固定するための脳波キャップ、及び消耗品である手術用鉗子を購入する。
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