研究課題
最終年度は、初年度に進行が遅れてしまった脳波の解析を主に行った。具体的には、以下の手法で解析を行った。[a] 脳波の周波数解析:脳波を高速フーリエ変換し、スペクトルの変化から被験者の興奮度やストレスの原因などを特定することを試みた。本研究では、特に変化が現れやすいα波とβ波に注目した。[b] 事象関連電位(ERP):事象関連電位(ERP)は、人間が内的・外的刺激を受けた際の認知や思考の結果として、刺激後数百ミリ秒程度後に脳が反応する電気的生理反応のことである。本研究では特に人間が失敗(エラー)を起こした際に観測されるエラー関連陰性電位(ERN)に着目し、手術における医療ミスという重要性の高いエラーに対して、脳波の計測により医療ミス発生時のERNの検出を試みた。医療ミスあるいはその予兆の検出を行うため、基礎実験として以下の実験を行った。驚き感情の検出:手術中にミスを犯した際の医師の感情として、驚きに近い感情が現れると考え,急激な外的刺激を与えた際の脳波を測定し、反応を観察した。具体的には、被験者が安静な状態の時に,突然被験者の前におもりを落下させることにより刺激を与えた。結果として、刺激時に被験者の高周波数帯α波およびβ波に顕著なスペクトル変化が見られた。また、刺激後の脳波形の変化を観察したところ、一部の被験者からERPを検出できた。脳波のリアルタイム測定を実現するために時間が掛かかったが、表面筋電位のみでは既に研究目的を達成できており、本実験により表面筋電位と脳波は解析するサンプリング周波数が大きく異なるため、表面筋電位と同じ特徴ベクトルに脳波を含めて特異動作判別を行うのではなく、表面筋電位による特異判別とは別に、脳波によるヒヤリハットの検出を行うことにより、医療ミスを防止する多重安全支援システムを構築できるという結論に至った。
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http://mwrlab.ws.hosei.ac.jp/