ゲームやテレビ、映画などのエンタテインメントが、高齢者の心の健康に与える影響を科学的に調査し、その結果をもとに、高齢者の心の健康度をより向上することが可能なエンタテインメントのあり方や新しいエンタテインメントを提案することが本研究の目的である。今年度は、地域タウン誌の広告で募集した32名の健康な65才以上の高齢者をランダムに二群に分け、それぞれ異なったビデオゲーム(市販品)を4週間(1日15分、週5日)に渡って行わせて、その前後で認知機能の変化を計測した。認知機能の計測には、医学および心理学検査で標準的に用いられている検査8種類を用いた。実験デザインは二重盲検ランダム化比較対象試験とし、認知指標の変化に関する有意確率は1%以下とした。実験計画は東北大学大学院医学系研究科倫理委員会、東北大学利益相反委員会の承認を得た。その結果、パズル系ゲームを行った群では、4週間後に、認知機能の中でも処理速度のみが有意に向上し、そのほかの実行機能や前頭前野機能全般には変化が無かった。それに対して、知能系ゲームの中でも作動記憶系のゲームを行わせた群では、4週間後に、処理速度に加えて、実行機能や前頭前野機能全般も有意に向上していた。処理速度、実行機能や前頭前野機能全般の向上の度合いは、パズル系ゲームと比較して、作動記憶系ゲームの方が有意に高かった。今年度の研究を通して、テレビゲームという、身近なエンタテインメントであっても、コンテンツ次第では、高齢者の認知機能を向上させ、生活の質の向上につながる可能性が示唆された。
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