健康長寿を具現化するために広義のエンタテインメントを利用した生活介入が高齢者の生活の質や認知機能等に与える影響を検証することが目的である。今年度は、単純な計算や音読を中心とした集団アクティビティと、有酸素運動と無酸素運動を組み合わせた集団アクティビティについて、ランダム化比較対照試験を行った。その結果、単純な計算や音読を中心とした集団アクティビティでは、実行機能、注意機能、認知処理速度、エピソード記憶の各スコアが被介入群と比較して、5か月後に統計的に有意に改善することが明らかになった。有酸素運動と無酸素運動を組み合わせた集団アクティビティでは、4週間の介入によって、実行機能、認知処理速度、エピソード記憶が対照群と比較して統計的に有意に改善していた。個人の特質が、こうした介入効果に与える影響を検証する基礎的研究として、若年健康被験者を対象として、遺伝子多形と認知的介入効果の関連を調べることも並行して行った。その結果、今後さらなる検討を要するが、神経栄養因子と関連する遺伝子で変異がないタイプの被験者には、認知介入効果が高く、大脳の可塑的変化も大きいが、変異があるタイプの被験者では、効果が弱く、大脳皮質の可塑的変化も少ないもしくは認められないことがわかった。こうした研究より、エンタテインメントが生活習慣として根付けば高齢者の認知機能を向上しうること、認知機能向上の効果は遺伝子多形によって異なることが示唆され、将来個人の特質にあった健康長寿を支えるエンタテインメントを開発するための準備を整えることができた。
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