研究課題/領域番号 |
23650104
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
久野 節二 筑波大学, 医学医療系, 教授 (70136216)
|
研究分担者 |
岩本 義輝 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (50184908)
尾崎 繁 筑波大学, 医学医療系, 講師 (60292546)
首藤 文洋 筑波大学, 医学医療系, 講師 (10326837)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 嗅覚 / 体性感覚 / 感覚統合 / 教示効果 |
研究概要 |
クロスモーダル実験の基盤として⑴嗅覚刺激の温度覚認知への影響の有無、⑵嗅覚刺激システムの有効性、⑶温度覚システムの有効性、を検討した。防音室内で健常成人(男女計5人、着座安静)に(1)可変温プレートで掌を加温し、温かさを感じたらスイッチを押す(温感トリガー)よう教示、(2)匂い提示(計測開始2分前)、(3)加温(20℃から40℃)とスイッチ押(起動トリガー)、(4)プレートから掌を外す、という実験を3回行い、脈拍、皮膚電気抵抗、手皮膚温を計測した。匂いは空気→ヒノキ→ミント→レモンの順で提示し、各刺激後は送気洗浄した。緑茶に比べて扱いが容易であるために実験システムの検討に適すると判断して選定した。実験終了後、匂いの質問紙調査も行った。プレート温上昇が速すぎて温感トリガー時の皮膚温が検出できなかった。リアルタイム計測では、実温計度と計測値との相関の線形性のばらつきで温度判定ができなかったので、プレート温の一定の上昇率から起動トリガーと温感トリガー間の時間を出し、各試行で温かいと感じたプレートの温度差を検討した結果、同じ匂いによる3回の試行で差異が見られた。各匂いについて空気のみ提示群と比較したが有意差はなかった。心拍数と皮膚電気抵抗に変化はなかった。印象評価では、ミント以外は匂いの種類が特定できなかった。モデル動物実験では拘束下で前肢裏を温度刺激する装置を開発した。室温25℃で3段階の温度刺激効果を視床下部で調べたが、効果はなかった。嗅覚刺激システムの有効性に関して、質問紙調査や実験の進行状況から、本嗅覚刺激システムの有効性が示され、お茶など手順の煩雑な匂い刺激にも適用できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
嗅覚刺激の温度覚認知への影響の有無について確定データは得られなかった。3試行間で起動トリガーと温感トリガーの間にばらつきが出た点に関しては、教示した「温かい」の定義が曖昧であるため、被験者がどの時点で温感トリガーのスイッチを押せばいいか躊躇したことが考えられるため、正確な温感トリガー設定用に加圧感受性素子の検圧スイッチを用い、頚部等の刺激を検討する必要がある。温度覚システムの有効性については、温度の上昇速度が緩徐な温度上昇が可能な装置を導入して、温度記録の時間解像度が適正化され、今回の問題点を解決する。
|
今後の研究の推進方策 |
嗅覚刺激の温度覚認知への影響の有無に関して、悉無的なトリガースイッチを加圧感受性素子を使った検圧スイッチ(研究分担者首藤開発)を使い、被験者に温かく感じたらその強度に応じてスイッチを押し込むように教示し最終的に完全に押し込まれる時間までの温度認知変化を段階的に検出することで、そのあいまいさを含めた正確な解析が可能となるので、この点を検討する。また、嗅覚刺激システムの有効性に関して、質問紙調査の結果や現場での実験手順の進行状況から見て、本実験で用いた嗅覚刺激システムが有効であることが示された。従って次年度ではお茶など香りの点て方が煩雑なにおい刺激についても実験可能である。温度覚システムの有効性については、温感刺激を提示する部位として手掌は必ずしも皮膚の温度感覚点密度が高い部位ではない事から、頚部や肩部などに刺激を提示することを検討する。また、温度刺激提示装置として用いた可変温プレートは温度上昇が急速で正確な温度認識計測に不向きであることが明らかになった。これを補正するため、プレート上に均質の陶板を載せるなどの対処を試したが温度上昇速度を遅らせる効果はあまりなかった。このため、緩徐な温度上昇をする加温装置(マントルヒーター)やプログラミングによる加温刺激制御が可能な装置の導入を検討している。これにより、温度記録の時間解像度が温感認識の検出で要求される時間解像度内に入りやすくなるため、本年度の実験で明らかとなった問題点の殆どが解決される。動物実験では、温度覚受容で変化する視床下部遺伝子発現について解析を進め、嗅覚情報受容やストレス環境による情動反応との関連を探索する。これらの条件が克服された段階で、緑茶に関する教示効果と可能であれば脳活動計測を実行する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究の進捗状況により当初予定した被験者数を下回ったため、研究費の一部を次年度に繰り越すことになった。次年度は、追加で予定するヒト対象実験の被験者謝金および研究補助のための短期雇用、温度覚刺激用の装置開発、動物実験用の消耗品等に充てる予定である。
|