各被験者の咀嚼音の骨伝導伝達関数を考慮した逆位相の咀嚼骨導音キャンセリング信号をリアルタイムに生成するシステムを構築し、人工咀嚼音呈示システムを組み合わせることで、置換した任意の人工咀嚼音を咀嚼タイミングに合わせて呈示し、人工咀嚼音の有無 およびその種類によって食感や味覚がどのように変化するかを測定し、食感・味覚と聴覚の相互作用メカニズムを解明するために、各被験者の咀嚼音の骨伝導伝達関数に依存する骨伝導をキャンセルする骨伝導音と逆位相の音信号をリアルタイムに生成するシステムを 試作し、それを骨伝導ヘッドホンまたはノイズキャンセリングヘッドホンで呈示することで、実際の咀嚼音を完全にキャンセルすることを試みた。具体的には、被験者の顔の適当な位置に骨伝導マイクとヘッドホンをセットし、食物を咀嚼してもらいながらマイクから の咀嚼音信号を自作の電子回路によって処理し、伝達特性(パワースペクトルのゲイン制御に相当するイコライジングや位相制御に相当するディレイ)を適応的に変化させながら骨伝導音が最も小さくなる設定条件を探索した結果、ある程度のキャンセリングが可能であることが分かった。個人の伝達関数の同定に時間を要するため簡易に測定する技術の開発ならびにその精度向上が今後の課題である。試作したシステムを改良し、付加する咀嚼音のタイミングを自由に制御できる装置を開発し、被験者実験を行なった結果、付加する咀嚼音のタイミングによって食感に与える影響が変化することを明らかにした。さらに、視覚テクスチャが食感に影響することを、数種の食品を用いて実験的に検証した。
|