研究課題/領域番号 |
23650110
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
吉澤 壽夫 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 助教 (20262503)
|
研究分担者 |
廣林 茂樹 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 教授 (40272950)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 感性計測評価 |
研究概要 |
本申請研究では、従来の解析方法に比べ、10万~100億倍以上の精度が向上した周波数分析法NHAを客観的な評価に利用することで、次世代の聴覚評価指標を確立する。具体的には、(1)オーディオ機器の違いによる測定実験、(2)音質評価における音源信号の検討、(3)SD法などの主観的評価との関連性の検討、(4)客観評価と連携した新しい聴覚指標の検討を行う。 研究成果として、最初に、本研究で使用されるNHAが高い周波数分解能を有し、音楽信号に含まれるノイズを減衰させることに応用できることを後述の論文に著した。また、研究計画のステップ(1)と(2)において以下の研究成果を得た。 (1)オーディオ機器の測定実験 ----- 現在市場で販売されている高級オーディオ機器で計測実験を行った。これにより、解析対象となるオーディオ機器の特性が本研究手法で解析できることを明らかにした。現在までに、数ミリ秒における良質な応答特性をもったスピーカー(ES701)の解析も行った。今後もオーディオ機器の計測実験を続けて行う。 (2)音質評価における音源信号の検討 ----- 音楽を聴く際に、スピーカーから出力される音は複雑な信号の合成(非定常な信号)であり、更にオーディオ機器の測定の際には、そのオーディオ特性が明確に分かる音源を作成する必要がある。そのため、TSP信号(高音域から低音域、または低音域から高音域まで、一定の傾きで音高が変化するもの)を用いた周波数特性の解析、また倍音成分を含む信号や、立ち上がりの良さを測定するための信号、周波数歪みを確認するための信号など、必要な要素を組み合わせ、音質定義の基準となる信号を作成する必要がある。したがって、このような高級なオーディオ機器を計測、解析する基準となる数種類の音源を作成した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、主観的な相対スケールで評価されているオーディオシステムの評価に関して、新しい定量的な音質評価技術を確立することを目的とする。特に、申請者等の開発したNHA(Non Harmonic Analysis)を用いることにより、パワースペクトル一辺倒の周波数特性解析から、時間的に変動する繊細な周波数の振る舞いを可視化し、主観的な評価要因を関連付ける新しい実験的な研究を試みるものである。したがって、本研究には高精度な実験装置が不可欠であるが、その装置の購入やその設定のおいて多くの時間を要した。このために実験の開始が計画よりも多少遅れたが、おおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
1.SD法などの主観的評価との関連性の検討 主観性な相対評価と本研究手法を比較する。また、定義した音質評価において、対象となるオーディオ機器の「ポップス、クラシック、映画音楽、ロック、メタル」などの様々ジャンルにおける得意なジャンルの定義も主観的評価との関連性と同時に定義することを考えている。現在、広域の周波数特性に重点を置いた得意ジャンルの定義は、原音に近づけることを考える場合、音の立ち上がりなど様々な観点から定義する必要がある。本研究手法によって新たな関連性の探求も試み、現在までに解析できなかった、主音以外の振幅の小さな周波数の影響やバスレフ特性などから、人間の聴覚においてどのような聞こえ方、感じ方をするのかを定義することにより、新たな音質定義を実現する。2.客観評価と連携した新しい聴覚指標の検討現在市場での評価基準となっている主観的評価と、本研究での音質定義との比較実験を行う。それにより、本研究が現在の主観評価との関連づけを行い、新たな評価基準としての信頼性を高める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究計画どおり実験装置などの購入により研究費のほとんど使ったので、次年度、使用できる直接経費は残り約60万円である。この残金は、論文投稿の経費、旅費、謝金および実験用消耗品の購入に充てる予定である。
|