本研究の根幹には、制作者側の表現したい意図・感覚的な情報をうまくコンテンツ上へ反映させようとする際、その背後で潜在的に存在する映像文法的知識を見直し、表現活動を支援する技術を探求することが重要な課題となっている。言語は一次元的に単語を並べ情報を伝えるが、視覚的言語では2次元もしくは奥行きを含めた3次元情報を伝達できるため、同時に複数の情報を視認させることが可能であり、映像文法では、より多くの知覚特性を掌握する必要がある。この特性を探求する契機として、大量のGeo-tag付き写真を集約することで、人気スポットという対象に内在する複数の情報、つまり、各スポットにいくつのシーズンが含まれるか、各シーズンはどの時期か、各シーズンはどの程度のバースト性を示すか、各スポットで年間どの程度人が訪れているか、スポット同士はどのような関係にあるか、という五つの観点を同時に視認できる可視化法について発表を行い、国際会議SIGGRAPHで発表を行い、その背後で、視覚的情報を同時に伝達する際の特性を研究した。また、さらに視覚情報に加え、聴覚へ同時に複数の情報を伝達するソニフィケーション(可聴化)に関する萌芽的研究も行った。人気スポットに含まれる、異なる複数のサブ撮影スポットについて、どの季節が人気か、また、複数の季節が人気を得ている場合、相対的にどの季節の方がより人気を得ているかという複数の情報を聴覚に提示する手法であり、情報処理学会で発表を行った。この手法では、Google Earthを基盤として、身体操作による空間内の移動を行いながら、視覚に向けて、写真の撮影位置と写真の内容を提示し、同時に聴覚へも複数の情報を提示することから、視覚・聴覚・身体感覚を同時に用いた試験的な実験環境を構築し、同時・多感覚的コンテンツ生成空間のさらなる探求への足掛かり的環境を構築するに至った。
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