本研究の目的は,1)学校いじめ問題を解決するためのひとつの手法として,生徒の交友関係をシミュレーションするマルチエージェントシステム(MAS)を作成すること,2)エージェントの一人を人が操作するプレイヤーに置き換え,ゲーム化すること,3)プレイヤーのゲーム内での行動から,いじめやいじめの被害者になりうる行動が何かを抽出し,診断テストとしての可能性を探ること,の3点である. この目的に沿ってエージェントの行動を教育学,心理学の観点からプログラムしたが,そのような平均値としての行動は現実のヒトの行動と異なることもあった.そこで,エージェントの行動を完成させて人工学級ゲームを設計し,診断テストとしての可能性を探るのではなく,先に人工学級ゲームを設計し,ヒトがプレイすることでヒトの行動特性をエージェントに反映できるようなハイブリッド形式のシミュレーションゲーミングプログラムを作成した. その結果,ヒトは交友する相手をランダムには選んでおらず,一度交友した相手とはさらに交友する“優先的選択”をしていることが明らかになった.よって,その分布(サイズとランクの関係)はべき乗分布であった.また,友人を作る際に,相手に合わせることよりも,相手を自分に合わせさせる行動が多く観察された.回数の多い順に,包摂行動,同調行動,卓越化行動,最後に排除行動であった.実際,昨今の生徒は自分の世界を大切にしており,互いに干渉しない範囲で交友関係を結ぶ傾向にあることが示唆されている.本研究の結果の汎用性を確認するため,5因子性格検査との比較を行った.
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