研究課題/領域番号 |
23650131
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
安達 真由美 北海道大学, 文学研究科, 教授 (30301823)
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キーワード | 音楽 / 妊婦 / 胎児 |
研究概要 |
本研究は、胎児の音や音楽に対する反応に胎児自身の特性と母親の特性がどう関わっているのか、実験的かつ縦断的に探究することを目的としている。 1. 妊婦対象実験: 妊婦向けセミナー等を通じてリクルートし同意書に署名した妊婦54人を対象に次の実験を行った。(a)妊婦の気分測定:「POMS短縮版」で音楽聴取前後における気分を測定。(b)妊婦の唾液中ストレスマーカー測定:実験中5回唾液中アミラーゼを測定。(c)妊婦の心拍測定:ベースラインと各音楽タイプ聴取時の平均心拍の差を比較。(d)楽曲に対する印象評価と気分の自己評価:妊婦の心拍測定終了後、使用した楽曲すべてを再提示し、それぞれについて曲の印象等について評定させた。(e)妊婦の気質測定:「成人気質調査票短縮版」で測定。(f)その他:データ分析の結果を解釈する際に必要になると思われ趣味、教育・経済レベルなどについての質問紙調査。(g)上記の測定値それぞれについて、妊娠週数、妊婦の気質、趣味の違い等、個人特性と考えられる変数との関連性を分析中である。 2. 胎児対象実験:1の実験に参加した妊婦のうち、胎児をエコーで追う実験への協力に同意した妊婦17人を対象に、次の実験を行った。(a)基線変動パターンの測定(wellbeingの確認)。(b)振動音刺激に対する基線変動の測定(覚醒度の確認、鋭敏性の測定)(c)胎児の動きの変化の測定:妊婦の平静時と、妊婦のヘッドフォンでの音楽聴取時、音楽のスピーカー提示時における胎児の動きを録画。(d)妊婦の測定:1と同様に気分、唾液中アミラーゼ、楽曲提示中の心拍変動、楽曲に対する印象等について測定。(e)上記bとcについて、妊娠週数や妊婦の気質、ストレスレベル、心拍変動等との関連性について分析中である。 3. 成果発表:本実験で使用する音楽の感情タイプを確認するために行った予備実験の結果を国際学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
(1)1年目に実験のハード面の確立が遅れたことから、なかなか産科医院への参加者募集の協力要請が行えなかったこと、(2)協力要請に行った産科医院の医師の意見と、過去に音楽を用いた胎児実験を行った研究者のアドバイスから、胎児実験の段取りを再構成したことから、データ収集の開始が2年目になってしまったため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は「基金」からの助成であるため、1年間の延長申請を行い承認された。参加者リクルートは順調であるため、1年間研究を延長して引き続きデータ収集を行い、データポイントを上げた上で分析を行うことで、目的は達成できると考える。また、妊婦と胎児それぞれの観点から分析結果をまとめ、学会で成果を発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に未使用額が発生した理由は、前年度からの研究の遅れにより、実験経費の使用自体も遅れたからである。平成25年度には、この未使用額を、縦断実験を続けて行うために使用する。すなわち、参加者への謝礼、エコーのレンタル料、心拍計のリース料、助産師への謝金、実験に必要な各種消耗品(DVD、電極、アミラーゼチップ,ミニDVテープ等)の購入等にあてる。
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