研究課題
本研究は、胎児の音や音楽に対する反応に、胎児自身の特性と母親(妊婦)の特性がどう関わっているのか、実験的かつ縦断的に探究することを目的とし、次の内容について行った。1. 妊婦対象実験:妊婦155人を対象に、次の実験を行った。(a) 気分測定、(b)唾液中ストレスマーカー(アミラーゼ)測定、(c)心拍測定、(d)楽曲に対する印象評価と気分の自己評価(心拍測定終了後)、(e)気質測定、(f)趣味、教育・経済レベルなどについての質問紙調査。2. 胎児対象実験:「1」の実験に参加した妊婦のうち、胎児をエコーで追う実験への協力に同意した妊婦18人を対象に、次の実験を行った。(a)基線(心拍)変動パターンの測定(wellbeingの確認)、(b) 振動音刺激に対する基線変動の測定(覚醒度の確認、鋭敏性の測定)、(c) 妊婦の平静時と妊婦のヘッドフォンでの音楽聴取時、スピーカー提示時における胎児の動きを録画、(d)「1」と同様に妊婦の気分、唾液中アミラーゼ、楽曲提示中の心拍変動、楽曲に対する印象等について測定。3. 結果:妊婦対象実験では、(1) 音楽聴取前よりも音楽聴取後の方が「心拍数」「アミラーゼ値」が下がる(よりリラックスしている)こと、またこれらの効果は、提示された音楽の順序には関係ないこと、(2) 音楽聴取前よりも音楽聴取後の方が、妊婦自身が感じている不安・緊張等の否定的な気分が緩和されること、(3) 気質によって、音楽の感じ方が異なり、その音楽に対する異なる感じ方が、音楽聴取前後の気分変化や心拍変化に影響を与えていることが分かった。また、胎児実験では、胎齢28週以上ではヘッドフォンよりもスピーカーで聴取している時の方がより動く傾向にあるが、それ以前の胎齢では個人差があることが分かった。今後、この個人差がどこからくるのかについて、妊婦実験で得た情報と関連づけながら検討して行く。
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