本研究は、イヌやネコといった伴侶動物の行動特性と、その家畜化の影響を明らかにすることを目指した。行動特性の遺伝的基盤に関して、ネコでは、イヌと同様に、アンドロゲン受容体遺伝子の多型と社交性の関連が示された。認知特性に関して、イヌではヒトの音声を左半球優位で処理している可能性、ヒトに対する視線接触の犬種差が示された。ネコでは、飼い主と他人の声の弁別、ヒト音声の感情情報の弁別、自分の名前と他の単語の弁別、飼い主の注意状態の弁別ができる可能性が示された。系統発生的変化を明らかにすべく、イヌとネコの近縁種を対象にした研究もおこなった。オオカミでは、同種内のあくびの伝染が確認された。ライオンでは、親和的行動が友好的な関係を維持する機能があること、仲直りによる葛藤解決はみられないことが明らかとなった。さらにイヌネコ同様に家畜化されたウマの近縁野生種であるシマウマでは、おとな個体が子ども個体よりも多く集団移動を率いることがわかった。
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