研究課題
本研究はゲシュタルト知覚モデルに基づく(パラ)言語情報処理系の構築と,発達障害者の行動理解を目的として行なわれた。前者においては,発声を要素に分割し,要素音の列と見なすのではなく,発声全体を一つのまとまりとして捉える音声の構造的表象の精緻化を試みた。音声の構造的表象は,異なる(かつ離れた)二時刻間における音声事象の差分(コントラスト)を特徴量として採択しており,フレーム時系列として定義される従来の特徴量と比較して,動的成分(速度成分)の導出が困難となる。本研究ではコントラスト特徴量の動的成分を理論的に追求し,トラジェクトリHMMによる音響モデルを修正することで構造的特徴の動的成分を導出することに成功した。また単語認識実験の結果,その有効性を示すことができた。また,幼児の単語獲得過程のシミュレーションを構造的表象を使って検討した。幼児の単語獲得は,音素などの細かい言語単位の獲得を待って行なわれるという考え方と,単語全体を一つのまとまりとして捉え,音素獲得とは別に,単語獲得が行なわれるとする考え方がある。ここでは後者に立ち,単語全体表象として構造表象を用い,また幼児の言語リズムへの敏感さにも考慮し,リズム特徴を導入することで構造表象に基づく単語認識率の精度向上を実現した。発達障害者の行動理解に関しては,研究協力者の櫻庭京子氏(獨協医科大学ST)と協力し,社会的インタラクション,特に感情的インタラクションに困難を持つ児童を対象に経時的な分析を行なった。発達障害児は感情のコントロールが難しく,一般にキレやすいと言われる。ここでは母親の協力の下,感情コントロール能力の向上を狙った独自のDQプログラムを半年以上実施し,一定の効果を得ることができた。
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Journal of Research Institute of Signal Processing
巻: vol.16, no.4 ページ: 319-322
Proc. INTERSPEECH
巻: 1 ページ: CD-ROM