研究課題/領域番号 |
23650138
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
飛松 省三 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40164008)
|
研究分担者 |
戸次 直明 日本大学, 工学部, 教授 (90209205)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 神経美学 / 絵画の美醜 / 1/fゆらぎ / 電磁場反応 |
研究概要 |
<目的>美的評価は、視覚像そのものに対するボトムアップ的評価と、視覚像から得られる意味や解釈によるトップダウン的評価の2つに大別される。従来の研究手法は、脳機能計測と主観的評価の相関から美を読み解いており、客観的に計測される脳活動を被験者の主観から評価する結果となっていた。これとは、全く逆の発想で、視覚対象の美を1/fゆらぎの観点から捉え、1/fゆらぎのあるものとそうでない絵画を見ているときの脳活動を306チャンネル脳磁図(MEG)で時空間的に分析し、絵画の構成要素(ゆらぎ)から美の脳内基盤を明らかにする。分析手法も刺激と時間的に同期した事象関連誘発反応だけでなく、気付きに関連するガンマ(γ)振動を用いて解析する。<今年度の解析>(1) 絵画のゆらぎ解析高名な絵の画集(世界の名画1000の偉業)を購入し、戸次が開発した解析アルゴリズムにより絵画のパワースペクトルを求め、両対数プロットでゆらぎ解析を行った。これによりルネサンス前後からモダンアートの絵画全体のスペクトル解析に基づくデータベースを構築した。この基本的解析により、H24年度に使う絵画(「ヴィーナス誕生」、「モナ・リザ」、「哭く女」など)を決定した。(2) 脳磁場反応解析美の評価にはいわゆる社会脳(上側頭溝ー扁桃体ー前頭眼窩野)の活動を捉えることが重要である。扁桃体や前頭眼窩野は比較的深部にあるので、通常のMEG解析法では活動が捉えにくい。そこで、空間フィルタ法の一種であるBeamformerにより扁桃体の活動をいかに捉えるかについて検討した。種々の刺激を用いて計測し、バーチャルセンセを活用して扁桃体の活動を安定して計測できることに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 脳磁場反応解析で一番のネックだった脳深部構造の扁桃体を空間フィルタの一種であるbeamformerにより活動を捉えることがバーチャルセンサを用いて可能になった。この方法論の確立で次年度の研究の進展が期待できる。2. 絵の画集(名画1000枚)を購入し、そのゆらぎ解析は終了した。その結果、似たような1/fゆらぎをもつ絵画を選んで、脳磁場反応の違いを解析できる状態となった。3. 扁桃体の活動を誘発脳磁場反応で解析するか、背景活動の時間周波数解析(ウエーブレット解析)で行うかは、もう少しデータが必要である。
|
今後の研究の推進方策 |
1. 脳磁場反応解析で一番のネックだった脳深部構造の扁桃体を空間フィルタの一種であるbeamformerにより活動を捉えることがバーチャルセンサを用いて可能になった。扁桃体の活動を誘発脳磁場反応で解析するか、背景活動の時間周波数解析で行うかは、もう少しデータが必要であり、さらに検討を加える。2. 絵の画集(名画1000枚)のゆらぎ解析は終了したので、似たような1/fゆらぎをもつ絵画を選んで、脳磁場反応の違いを解析できる状態となった。複数の絵画を選択し、脳磁場反応の違いを解析する。時間的余裕があれば、画像のフィルタリング処理を行い、1/fゆらぎを除去し、その重要性を検討する。3. 繰り越した額は約1万円なので、物品費に充てる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
MEGオープンラボ代、被検者への謝金、国内学会参加旅費、コンピュータ関連の消耗品費に使用する。
|